研究課題/領域番号 |
22KJ2821
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
田川 菜月 東邦大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 巣作り行動 / 視床下部 / 外側視索前野 / c-Fos |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、視床下部の組織学的解析と機能解析によって巣作り行動の制御に関わる新規の神経機構を明らかにすることである。 2022年度までは、多くの生得的行動の中枢が存在する視床下部にて巣作り行動時に活動する脳領域を探索するために組織学的な検討を中心に進めてきた。そして、巣作り行動を行ったマウスでは神経活動マーカーであるc-Fosの発現が外側視索前野で特異的に増加することが明らかとなった。また、c-Fos発現陽性となる神経細胞集団がどのような細胞なのかを明らかにするため、多重蛍光in situ hybridization法を用いて神経伝達物質等の遺伝子発現を組織学的に検討することを進めた。その結果、これらの細胞のうち約半数は遺伝子Aを発現していることを見出していた。 2023年度には遺伝子AのCreドライバーマウスを用いて、この遺伝子を発現する細胞集団の神経活動を特異的に操作することを試みた。このCreマウスの外側視索前野に対し、アデノ随伴ウイルスベクターによって人工受容体であるhM3Dq遺伝子を局所発現させた。そして、この受容体に結合するCNOを投与することで、外側視索前野の遺伝子Aを発現する神経細胞を薬理遺伝学的に活性化させた。その結果、非活性化時に比べて巣作り行動に費やす時間が増加することが確認された。以上の結果は、遺伝子Aを発現する外側視索前野の神経細胞が巣作り行動の制御に関わる可能性が高いことを示している。当初の計画には含まれていなかったが、巣作りに関わる神経細胞が雌雄や生理状態を問わず確認できるかについて検討するため、これまで検討していた性経験のないオスマウスとは別に、メスマウスや父親マウスを用いた組織学的検討を行った。その結果、メスマウスや父親マウスにおいても、巣作りを行ったマウスでは外側視索前野が活性化していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初2023年度の実施を予定していた薬理遺伝学的な神経活動の抑制実験とカルシウムイメージングのセットアップと予備実験の代わりに、研究実績の概要に記した追加実験をおこなったため。
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今後の研究の推進方策 |
当初、2024年度にはカルシウムイメージングによる巣作り行動中の神経活動の記録を実施する予定であった。しかし現在の進捗状況を鑑みて、カルシウムイメージングは実施せずに薬理遺伝学的な神経活動の操作実験の内容を充実させて実施するよう軌道修正する。 まず、上に記載した薬理遺伝学的に神経活動の促進実験を引き続き実施し、結果の再現性を検討する。 ここまで、薬理遺伝学的な神経活動の促進実験はマウスの休息期にあたる明期の特定の時間帯に実施してきた。しかし、これまでにマウスの巣作り行動の観察してきた結果から、時間帯によって巣作りへのモチベーションの程度が異なることが分かっており、実施する時間帯によって結果が変わる可能性もある。そこで、巣作りへのモチベーションが特に低かった暗期開始直後にも同様の実験を行い、マウスが巣作り行動に費やす時間が非活性化時に比べて増加するかについても追加で検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた薬理遺伝学的な神経活動の抑制実験とカルシウムイメージングのセットアップと予備実験の実施に合わせて購入予定であった物品を購入しなかったため次年度使用額が生じた。 この次年度使用分を含め、当初の計画よりも充実させて実施することを予定している薬理遺伝学的な神経活動の操作実験に必要な物品を購入するのに使用する予定である。
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