ボトムセルに結晶Si太陽電池を用いたペロブスカイト/結晶Siタンデム太陽電池の中間層用透明導電膜(Transparent Conductive Oxide film: TCO)にZrをドープしたIn2O3(IZrO)の検討を行った。光学シミュレーションを行った結果、中間層に適切な膜厚は20 nmと従来の太陽電池に用いるTCOの膜厚である110 nmに対して薄膜であることが明らかとなった。そのため、設定膜厚を20 nmとし、酸素流量やスパッタリング圧力を変化させ、近赤外領域での高透過率かつ低抵抗なIZrOの作製を行った。様々な条件で成膜を行ったところ、近赤外領域で95%を超える透過率を有しつつ、キャリア移動度22.5 cm2/Vsを超えるIZrOの作製に成功した。さらに、Zrは熱処理によるTCO中の酸素欠損を抑制する目的であったため、熱処理前後でのインジウム、酸素、ジルコニウムの元素濃度を比較したところ、酸素含有量が概ね一定値であり、Zrのドープによる酸素抜けの抑制に成功した。さらに、ZrはInとイオン半径が近いため、作製したIZrOの歪の抑制の評価を行ったところ、作製したIZrOは粉体のIn2O3と格子定数が一致することが確認できた。今後は、中間層にIZrOを用いたペロブスカイト/結晶Siタンデム太陽電池の作製に取り組む予定である。
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