2023年度は、主要な調査対象地である山形県における質的社会調査を集中的に実施した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響のため、インタビュー調査や参与観察を含む、現地での本格的な質的社会調査の実施開始が2022年秋以降となってしまったため、年度を通じて現地調査を行えたのは本年度が初めてであった。2022年度までに蓄積してきた知見(2022年2月以降県内各地の図書館や公文書館等にて実施してきた資料収集と分析作業の結果)をもとにして、参与観察と離村者へのインタビュー調査を行ってきた。参与観察は、無住化集落にて行われている田畑の耕作や山菜、きのこ採集、草刈り、花卉栽培等のほか、離村者有志による同郷団体の活動(民俗行事の実施や水路、道路、公民館等の管理活動)を対象とした。これらの成果は、日本村落研究学会東北地区研究会(2023年11月)や、日本村落研究学会大会(2023年12月)にて公表したほか、2つの研究会でも報告し、アドバイスを受けている。ここでの研究成果をもとにして、論文投稿のための執筆を進めている。 研究期間(課題番号変更前の2021-22年度含む)全体を通じては、当初、COVID-19の影響を大きく受け、県境を越えた移動の自粛を求める緊急事態宣言の発出等がなされていたため、感染リスク等が調査倫理上で考慮すべき大きな問題となり、調査手順の変更を余儀なくされた。それでも、比較研究として準備していた東京都多摩ニュータウン地域での研究(文献研究やデータ取りまとめ)に力点を置き、投稿論文の掲載(『ソシオロゴス』誌・2022年)のみならず、単著として公刊可能な段階まで達することができ、出版社と校正作業を進めている。当初は調査の遅れがみられた無住化集落の研究についても、上述したような形で2022年度以降は順調に進行させることができ、今後の研究活動にもつながる成果を得られた。
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