研究課題/領域番号 |
21J00043
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
櫻間 瑞希 早稲田大学, 法学学術院, 特別研究員(PD) (40982632)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | タタール・ディアスポラ / タタール / 母語継承 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、各地に居住するタタールがどのような背景要因からタタール語を継承できたのか、あるいは、継承できなかったのかを考察することを目的としている。1年目となる2021年度(令和3年度)は、下記に示す2点の作業を行なった。 ① 2021年6月にタタールスタンでの資料調査および聞き取り調査の実施を予定していたものの、COVID-19の世界的流行により渡航が困難な状況が続いたことから、可能な限りでオンラインでの調査に切り替え、本調査の実施は渡航が可能な時期まで無期限の延期とした。具体的には、2021年5月から2月にかけて、オンライン通話ツール等を用いた聞き取り調査(主に事実確認にとどまる)を実施した。これらの調査はあくまで補完的なものではあったが、COVID-19流行下という特殊な状況における民族語の教育活動や、これらに対する支援のありかたの一端を知るという意味では、本研究の当初の計画と想定を超えて得られた情報は多かった。なお、ロシアに渡航しての調査の実施は、ウクライナ侵攻を受け、今後はこれまで以上の困難が予想される。 ②カナダを事例に、ソ連を経験しなかった国々に居住するタタールの民族語継承の状況と、タタールスタン共和国による支援の影響を検討する目的で、モントリオールのタタール団体への事前聞き取りをオンラインで実施した。また、並行してタタールスタン共和国による在外タタールに対する諸支援に関する行政文書の読み込みも行い、近年新たに実施されるタタール語・タタール文化の振興策ではSNS戦略が重要視されている点に注目するに至った。これは必ずしも本研究が当初想定したものではなかったが、今後の研究に必要な視点であることから引き続き注目したい。 総じてCOVID-19の世界的流行の影響により多くの変更を余儀なくされたものの、研究成果の公表に関してはおおむね順調に進展した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度となる2021年度(令和3年度)は、COVID-19の感染拡大およびウクライナ侵攻の影響により、ロシアでの調査や資料収集の実施はいずれも無期限の延期を余儀なくされた。ただし、可能な範囲でオンラインでの補完調査のほか、関連する行政文書等の入手と分析を行った。その過程で得られた情報と視点は、当初の研究計画から想定されたものではなかったが、今後研究をさらに発展させる重要な足がかりになると考えられる。なお、これらの成果の一部は、日本中央アジア学会報への投稿のほかに、日本ロシア文学会においても報告する機会に恵まれた。また、2年目以降にカナダでの調査を計画していることから、現地調査に先駆けての資料収集とオンラインでの予備調査も進められている。 研究の完遂までにはまだ時を要するが、これまでの調査にもとづく中間的なとりまとめや予備的な分析結果のいくつかは、すでに学会等での報告や論文によって公開されている。予測しがたい社会情勢により、多くの計画が大幅に変更せざるを得ない状況ではあったものの、上述の研究活動および成果発表に鑑みると、2021年度において本研究は期待通りに進展した評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施した事前調査をふまえたうえで、2年目はカナダ・ケベック州における資料調査と聞き取り調査を実施したい。カナダ国内のタタール人口はモントリオールに多いことから、当地のタタール民族団体を訪問し、当地でのタタール語の継承と教育のありかた、タタールスタンとの関係にとくに注目して調査を行う。また、カナダ国内の継承語教育と旧ソ連地域からの移住者に関する資料のいくつかはケベック州立図書館・文書館でのみ入手が可能であることから、文献収集も行う必要がある。 また、タタールスタン共和国におけるエリートインタビューの実施を計画している。ただし、ロシアは現在ウクライナ侵攻をめぐって特殊な社会状況下にあることから、オンラインを含めたあらゆる調査の実施は慎重に検討する必要がある。
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