本研究の目的は非人間化のメカニズムを解明することである。非人間化とは、人を人以下の存在として捉え扱うことである。非人間化は、広く一般に認められる 現象であり、他者への共感を阻害し攻撃を促すため、メカニズムの解明は非常に重要である。 本年度は、非人間化を引き起こす要因を検討する実験を行うための予備実験、および非人間化と関連する概念である心の知覚についての実験を複数行った。具体的には、高齢者に対する差別的態度であるエイジズムと高齢者への心の知覚の関係について調査を行い、エイジズムの傾向が強い個人ほど、高齢者の心を知覚しにくい、つまり高齢者を非人間化しやすいことが明らかとなった。また別の実験では、写真の呈示時間を操作することで写真に写された対象に対する心の知覚が操作できることが明らかとなった。上記の研究成果は、日本心理学会において発表され、国際誌において査読審査中である。 また、表情と心の知覚の関係について検討した研究では、笑顔の人に対しては心を知覚しやすいという結果を得ており、国際誌 Social Cognitionにおいて採択された。 上記以外でも、マスクをした表情の認識に文化差があるかについて検討する研究も行い、国際誌への投稿を行った。さらに他の研究者とともに行った複数の共同研究の成果も国際誌での査読審査を受けており、うち数点は既に採択された。
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