研究実績の概要 |
本研究は,性的指向・性自認の性発達過程の解明と社会実装という課題を遂行している。本年度は,性的指向認知に関わる,魅力認知,偏見やバイアスに関わる研究に注力した。具体的には,目,口,顔全体の魅力の評価は長時間提示されるよりも短い時間提示されることで向上することがわかった。しかし,顔のパーツの中でも鼻は長い提示時間でより魅力的と評価された。表情による検討も加えると,笑顔の顔はより魅力的と評価される傾向があり,怒りの表情の顔は魅力が低いと評価された。この研究成果は,魅力評価は提示時間や顔のパーツに依存することを明らかとし,認知心理学における基礎的な知見を提供するものである。その他にも,人が性的指向に基づいて感情を読み取るときに偏見が生じるかどうかを検討するなど,精力的に研究を進めていた。これら成果は,27th International Computer Science and Engineering Conference (ICSEC) やフォーラム顔学2023にて発表を行い,査読つき英語論文として掲載された (Kobayashi et al., 2023; Bucher, Kobayashi & Watanabe, 2034)。その他にも,潜在的に (無意識に) 付加された知識は真実と錯覚してしまうのかを検討することで,認知バイアスに関わる基礎的知見を積み重ねている。この研究成果は査読つき英語論文として掲載された (Sasaki et al., 2023)。 以上のように,顔の魅力認知,性的指向に基づく感情認知そして認知バイアスに関する検討を進め,国内外での学会発表ならびに論文投稿を行なった。これら研究成果は,人の認知プロセスをより深く理解する上で貴重な知見を提供したといえよう。
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