研究課題/領域番号 |
21J20587
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐竹 祐紀 早稲田大学, 創造理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 伸展型ロボット / ソフトロボット / インフレータブル構造 / 熱溶着 / 軌道計画 |
研究実績の概要 |
昨年度計画していたCAEソフトを用いての被荷重条件下でのインフレータブルチューブの屈曲形状解析モデルの構築を行った。構築した解析モデルによる結果と実物での実験結果を比較し、高い精度で合致する結果を得られることを確認した。これにより、実物のチューブを用いずとも伸展型ロボットの動作可能範囲を推定する手段を構築することに成功した。 また、植物のように成長する伸展型ロボットの移動動作を支援する軌道計画手法に関する研究を行った。熱溶着によって屈曲形状を作成するためチューブの屈曲角度が常に一定の値となるという条件により既存の軌道計画手法は本ロボットには用いることが不可能であったため、新たに同時のアルゴリズムの開発を行った。本手法は2次元平面上での動作のみを対象としたものではあるが、本研究にて開発しているロボットの屈曲動作特性を考慮したものとなっており、実際に機体を用いての実験において障害物を回避しつつ目的地点へと移動可能であることを確認した。また、本手法はロボットの大域的な移動のみならず、目前の障害物を回避するための動作の生成といった局所的な軌道計画にも用いることが可能である。この成果は国際ジャーナルであるIEEE Robotics and Automation Letters にて発表済みである。この手法の開発により、伸展型ロボット単体の自動動作だけでなく複数台を同時に自動で用いることも可能となり、複数台ロボットによる広範囲の探索等のより実用的な運用性能が向上すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度計画していたCAEソフトを用いての被荷重条件下でのインフレータブルチューブの屈曲形状解析に関して、構築した解析モデルによる結果と実物での実験結果を比較し、高い精度で合致する結果を得られる解析モデルの構築に成功した。しかし、溶着形状やチューブ径が現在用いているものから大きく異なった際の解析結果の妥当性の検証が不十分であること、および精度良い結果を得るためには解析に膨大な時間を要することを考慮すると、実物を用いての検証と比較した際に解析を行うことの優位性を示すには至っていないと思われる。そのため、解析モデルの構築には成功しているが、これによる当初想定していたほどの効果は得られていない。伸展型ロボットの設計支援アプリケーションとしての開発を進めることができれば解析モデルの価値も高めることができると考える。 伸展型ロボットの移動のための軌道計画手法に関しては既存の手法を参考としつつ独自のアルゴリズムを構築することに成功した。また、本アルゴリズムと実機とを組み合わせて行った実験においてロボットが期待通りの動作に成功した点、これまでに自分が開発してきたアルゴリズムと比較して移動コストの小さい経路を拘束に得ることが可能であった点から本アルゴリズムの有効性を示すことができた。したがって、軌道計画手法の開発に関しては順調に成果を得られていると考える。現在、本ロボットの障害物回避動作においてはピッチアップ動作により3次元的に障害物を乗り越えて移動する場合よりも、2次元平面上における旋回動作によって障害物を回避する場合の方が移動コストが小さくなるという想定の下開発を行っていた。これに関し、より具体的なコストの比較と、その結果に応じてピッチアップ動作を採用するアルゴリズムを組み込むことにより、本ロボットの軌道計画手法としては更なる性能の向上を見込むことができる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は複数の伸展型ロボットのボディがインタラクションしながら動作するための理論構築を目的として研究を行う。この複数ボディのインタラクションの形態として、特にボディが分岐して伸展するための機構の開発を行う。この機構にはこれまでの熱溶着技術を応用し、チューブのフィルム表面に分岐の起点となる穴を熱溶断によって作成することが有効であると考える。伸展済みのロボットボディの内部から作成した穴を通るようにチューブを送り出すことで分岐チューブの伸展を実現する。この分岐機構を実現することにより,入り組んだ空間での広範囲の同時探索が可能となることや、分岐チューブを支柱のように用いて姿勢保持のための支持力を得ることが可能となると期待される。 分岐機構の開発には、分岐の起点となる穴を作成するための熱溶断に関する温度モデルや分岐チューブの剛性を表すモデルの構築が重要となると考える。しかし、温度に関するモデルでは周囲への放熱等の要素を正確に表すことが困難であることや、分岐の起点となっている箇所周辺の構造が複雑な形状となることが予想されることにより、理論のみに基づいたモデルの構築は極めて難しいと思われる。そこで、これらのモデル構築を行う手法としては初年度の研究と同様に、実機を用いた実験から得られたデータに基づいてのモデル構築、およびそのモデルの妥当性の検証を行うことが有効であると考える。現在、世界で伸展型ロボットの研究事例は増加傾向にあるがリアルタイムでの分岐作成機構を実現した事例は未だ存在しないため、本機構の開発は本ロボットの運用方法の拡張に繋がるだけでなく伸展型ロボットの分野全体に大きな影響をもたらすと確信している。
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