研究課題/領域番号 |
21J22416
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
登内 奎介 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 交差防御抗体 / インフルエンザ / Fc依存的防御メカニズム / 万能ワクチン |
研究実績の概要 |
本年度は、本研究で用いている4種の代表的なインフルエンザ交差防御抗体のうち、感染防御におけるFc依存性の高い3種について、防御効果の主体を担う責任細胞の同定を目指した。 まず、感染マウスの肺における様々な免疫細胞の変動について、抗体投与時と非投与時、および非感染時の肺組織を用いて、フローサイトメトリーによる比較解析を行った。その結果、抗体非投与の感染マウスにおいては非感染マウスと比較して、肺組織中の炎症系細胞の増加と、炎症に伴うリンパ球を始めとする一部の免疫細胞の減少が確認された。一方、3種の抗体投与群については、いずれも上記の細胞の変動が抑えられており、免疫細胞との相互作用、あるいはそれに伴うウイルスの増殖阻害による炎症の緩和が示唆された。しかし、上記以外の細胞も含め、非感染マウスと比べて、抗体投与に伴う顕著な増加を示す免疫細胞は確認できず、フローサイトメトリー上での責任細胞の同定には至らなかった。 そこで、抗体と直接相互作用が可能で、ウイルス排除や炎症の緩和に関与する細胞について感染前に枯渇させ、感染防御効果の変動が見られるか試験することで責任細胞の同定を試みた。そして、上記の条件に合致し、フローサイトメトリーでも変動が確認された肺胞マクロファージに焦点を絞り、感染実験を実施した。その結果、3種類の抗体投与群において、肺胞マクロファージの枯渇に伴う感染防御効果の減弱が見られた。特に、このうちのin vitroで中和活性を示さない2種の抗体については、著しい減弱が見られた。一方、残りの1種については感染防御効果の減弱が見られたものの、他の抗体と比べてその度合いが小さかったため、肺胞マクロファージ以外の細胞の関与が示唆された。以上の結果から、交差防御抗体は肺胞マクロファージ依存的に感染防御効果を発揮し、特に中和活性を持たない抗体では不可欠な細胞であることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、本実験で用いている交差防御抗体の感染防御効果について、感染防御への寄与が示唆される免疫細胞の同定を試みた。その結果、Fc依存的に感染防御効果を発揮する3種類の交差防御抗体において、肺胞マクロファージが感染防御に寄与することを明らかにした。肺胞マクロファージ以外の免疫細胞の関与の有無についてはさらなる検証が必要であるが、少なくとも一つの責任細胞を同定できたことで、防御機序の深堀りや他の細胞との相互作用の検証など、今後の研究への発展性が持てることから、現在までの進展は順調であると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の実験により感染防御への寄与が明らかとなった肺胞マクロファージに焦点を当て、交差防御抗体と肺胞マクロファージの相互作用を検証し、どのような機構でウイルスの排除が亢進しているのかを明らかにする。具体的には、in vitroにおけるファゴサイトーシスアッセイやサイトカイン産生・表現型の解析を行うことで、抗体との相互作用による機能的な変化を検証する。また、肺胞マクロファージ以外の免疫細胞の関与についても検証し、包括的な相互作用の有無を明らかにする。
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