研究課題/領域番号 |
21J22803
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
杉本 海里 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 社会的認知 / 期待違反 / 社会的地位 / 幼児 / 児童発達 / 宗教的信念 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、事前期待を違反する振る舞いを見せる他者に対する認知処理特性(期待違反効果)と、その背景要因の解明を目的として、幅広い年代を対象に研究を進めている。当該年度は、期待違反が社会的地位の認識に与える影響について検討した。 ヒトは以前より、様々な領域において、超常的で人智を超えた振る舞いを見せる他者を高い社会的地位に位置づけてきた。例えば、未来を覗いて人々を導く預言者や、空を飛んで未知の力で社会に安定をもたらすスーパーマンなどは、その振る舞いの社会貢献性に依らず偉大な存在として認識される。そこで、一般的期待に反する超常的振る舞いと社会的地位の高さを結びつける心理機序が、初期発達段階においても形成されているのかを検討することを目的として実験を行なった。実験は、社会における一般的期待を十分に理解しており、かつその一般的期待に反する振る舞いを検出できるとされる、5・6歳の幼児を対象とした。振る舞いの属性によって社会的地位との結びつきの傾向が異なる可能性を検討するために、心理的、物理学的、生物学的な属性を持つ振る舞いへの反応をそれぞれ調べた。その結果、5・6歳の幼児は、すべての属性において、一般的期待に反する超常的振る舞いと社会的地位の高さを結びつけることが明らかとなった。この結果は、期待違反から社会的地位を推測する心理機序が、初期発達段階から見られることを示しており、社会的評価のみならず宗教的信念の形成過程の解明にも寄与しうる知見である。本実験の成果をまとめた論文は、査読付き国際誌に投稿し、現在査読審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、対面での実験実施の機会創出が困難であった。さらに、本研究は幼児を対象とした実験であったため、成人を対象とする実験と比較して、より多くの実験実施上の制約があった。そのような状況下で、40名を超える幼児を対象に対面実験を実施することを実現した。実験実施が遅れてしまったため、やや遅れていると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、期待違反効果に基づく社会的な認知特性の発見に加えて、期待違反効果の要因の検討も行う。考えられる要因として、性格要因だけでなく環境要因も挙げられ、両方の要因について検討を進める。なお、新型コロナウイルス感染症のため、子どもを対象とする対面実験の遂行に制限がかかっている。円滑な研究遂行のために、対象者を大人に変更したり、オンラインでの実験調査の実施に方針転換したりする工夫が求められると考えられる。
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