研究課題/領域番号 |
21J22855
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
内田 太朗 早稲田大学, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 抑うつ / マインドフルネス介入 / セルフコンパッション |
研究実績の概要 |
下記の2つの研究を実施した。 本研究の目的は,「日常生活下介入によるうつ病へのマインドフルネス・セルフコンパッション訓練法の開発」である。その訓練法の有用性を裏付ける実証的知見を得るために,うつ症状や不安症状を主訴とする45名に対して8週間のマインドフルネス介入を実施したデータを分析した。分析の結果,マインドフルネス介入において,マインドフルネスとセルフコンパッションの双方が高まった場合に最もうつ症状が改善するという相乗効果が示された。また,共分散構造分析を用いて,8週間のマインドフルネス介入において,介入前のセルフコンパッションが高い者ほど,介入後のマインドフルネスが高くなるという影響関係を明らかにした。 以上の結果をまとめると,次のことが明らかとなった:①マインドフルネス介入において,マインドフルネスとセルフコンパッションの双方が高まることによって,うつ症状が改善することが示唆された,②マインドフルネス介入において,「始めにセルフコンパッションを,次にマインドフルネスを介入する順序」がそれらの相乗効果を生み出すために効率が良い可能性がある。これらの成果は,日本認知・行動療法学会で発表を行い,10th world congress of cognitive and behavioral therapiesでも発表予定である。 次に,マインドフルネスとセルフコンパッションの相乗効果を厳密に検討するため,マインドフルネスの操作とセルフコンパッションの操作を行う介入研究を実施中である。うつ症状または不安症状を有する大学生・大学院生80名を対象とする予定で,令和4年度中に56名の実験的介入を終了している。全てのデータ取得後に分析を行う予定であり,予想される結果は,「うつ症状に対して,マインドフルネスの操作とセルフコンパッションの操作の相乗効果が示される」である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度から,研究の推進方策を変更した。その理由は,本研究の目的が「日常生活下介入によるうつ病へのマインドフルネス・セルフコンパッション訓練法の開発」であるが,その支援法の有効性を示す実証的知見が不足しており,さらなる実証的知見が必要であったためである。 2022年度において,「セルフコンパッション行動を促進するマインドフルネス介入の開発」の介入の有効性を示す実証的知見を介入研究から得ることができた。また,マインドフルネス介入において,「まずセルフコンパッションをトレーニングし,その次にマインドフルネスをトレーニングする順番」が有用である可能性も明らかとなった。そのため,「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,調査研究によって,日常に気分の改善に対するマインドフルネス行動とセルフコンパッション行動の組み合わせ効果が示された。さらに,マインドフルネス介入において,うつ症状の改善には,マインドフルネスの変化とセルフコンパッションの変化の相乗効果が示された。しかし,マインドフルネス介入において,その効果を最大化するための介入方法を解明するためには,さらなる作用機序の解明が必要である。 そのため,今後の研究の推進方策について,「日常生活下介入によるうつ病へのマインドフルネス・セルフコンパッション訓練法の開発」のために,マインドフルネスの操作とセルフコンパッションの操作を行う介入研究を実施する予定である。現状では,「マインドフルネスの実践前に日常生活下介入によってセルフコンパッションを高める支援法」の有用性を裏付ける根拠が不足しているため,この介入研究において,「うつ症状の改善に対するマインドフルネスの操作とセルフコンパッションの操作との相乗効果が示されるかどうかを検討する必要がある。
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