2022年度に実施したマインドフルネス介入の研究では、うつ症状の低減に対するマインドフルネスの増加量とセルフコンパッションの増加量の交互作用が有意であり、マインドフルネス介入によってマインドフルネスとセルフコンパッションの双方が高まった場合に、最もうつ症状が低減することが明らかとなった。このことから、うつ症状を低減させるためには、マインドフルネスやセルフコンパッションの単一の介入手続きと比較し、双方の介入手続きを含めた方が効果的である可能性がある。 2023年度では、マインドフルネスとセルフコンパッションの介入手続きを条件とした実験デザインを用いて、うつ症状に対する双方の介入手続きを組み合わせた効果(相乗効果)を検討した。82名の研究協力者を4群(①マインドフルネス介入のみ群,②セルフコンパッション介入のみ群,③双方の介入を併用した群、④統制群)にランダムに振り付け、①②③の群に対して計2回のオンライン介入を実施し、2週間のホームワークの実施を求めた。 分析の結果、質問紙指標であるうつ症状や,特性マインドフルネス,特性セルフコンパッションに対して、マインドフルネスの介入の主効果のみ示唆された。その一方で、日常生活下調査の指標である抑うつ気分およびセルフコンパッション行動に対しては、マインドフルネスの介入とセルフコンパッションの介入の相乗効果が示唆された。そのため,日常生活下のセルフコンパッション行動を促進し、抑うつ気分を改善させるためには、マインドフルネスの介入とセルフコンパッションの介入を組み合わせることが有用であることが示された。 以上より、うつ症状に対するセルフコンパッション行動を促進するマインドフルネス介入の開発においては、個人に最適化されたフィードバックに加え、マインドフルネスとセルフコンパッションの双方の介入を含めることが有用であることが明らかとなった。
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