最終年度はまずこれまでに得たデータの整理と分析を行い、その結果を「三重県旧南勢町における二拍動詞五段活用連用形アクセントの変化」(1) と「三重県旧南島町における名詞アクセントの報告」(2) として発表した。各研究発表の概要は以下の通りである。 (1)「書いた・読んだ」等のアクセントは、京阪式アクセントにおいて、近世から現代にかけて低高低から低低高へと変化したとされる。当該の現象について調査した先行研究は複数存在し、その変化の進度が地域によって様々であることが示されてきた。しかし三重県における調査はなく、その様相は不明であった。筆者による調査の結果、三重県旧南勢町においては逆に低低高から低高低への変化が起こっていることが明らかになった。 (2) 旧南島町のアクセントは金田一春彦氏による1974年の発表からあまりデータが更新されておらず、現在のアクセントの様相は不明であった。そこで筆者が80代と50代との2名を対象に調査を行ったところ、先行研究で述べられていた語頭のアクセント低下が、特に50代のインフォーマントで聞かれなくなっていることが明らかになった。 また10月、2月、3月には旧南勢町・玉城町・志摩市において新たにフィールドワークを行い、データの採集を行った。
研究計画当初、研究期間全体の目的は、フィールドワークにより三重県における方言アクセントを記述し、それを京阪式アクセント史上に位置付けることであったが、初年度の研究状況に鑑み、2年目(最終年度)からは対象地域を絞って研究を進めることにした。その結果、研究期間全体では、三重県中南部の旧南勢町・玉城町・志摩市における名詞・動詞のアクセントの様相が明らかになった。本研究で得られた成果は京阪式アクセント研究に、ひいては日本語アクセント研究にも貢献する可能性がある。
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