本研究では、硫黄含有アモルファスポリマーに分子間水素結合を導入する戦略により、類例ない超高屈折率・可視透明性を示す光学材料の一群を見出したほか、高屈折率ポリマーの物性予測・機能拡張に関する成果も得た。以下、研究期間全体での成果を項目ごとに示す。 (1) 水素結合を導入した高屈折率ポリマー: (i) メチルチオ基を有するポリ(フェニレンスルフィド) (PPS) を用いた超高屈折率化: ヒドロキシ置換PPS (OHPPS) とメチルチオ置換PPS (SMePPS) を共重合すると、中間の組成比で両者の寄与が最大化され、ホモポリマーを凌ぐ超高屈折率 (nD = 1.85) を示すことを見出した。SMePPSは側鎖の酸化・脱保護により光学特性を系統的に制御でき、特にチオール置換PPSは分子間水素結合により屈折率がnD = 1.84まで向上した。 (ii) 多点水素結合の導入: (i)で見出した方法論をジヒドロキシ置換PPSに拡張すると、密度の向上に伴い屈折率がnD = 1.85まで向上した。また独・ミュンヘン工科大と連携し、PPS以外の構造としてポリ(チオウレア)に着目、密で無秩序な水素結合に由来して可視透明性・超高屈折率・穏和な条件での分解性を示すほか、発光電気化学セルの光取り出し層としても機能することを明らかにした。 (2) 機械学習による屈折率予測: 屈折率の新たな予測手法として、大規模言語モデル (GPT-4) の利用が効果的であることを実証した。 (3) PPS誘導体の新たな末端修飾反応の開発: PPS誘導体への反応性付与を達成する一つの手法として、重合不活性なジスルフィドモノマーをキャッピング剤とし、両末端にハロゲン基を有するテレケリックポリマーの高効率合成手法を開発した。得られたポリマーは更にカップリング反応することで、熱硬化性を示すビニル基を導入可能であった。
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