専門内容を第二言語でディスカッションする能力の発達プロセスを解明するために、1年目は、まず困難が何であるかにフォーカスをあてた。2年目である本年は、その困難を克服していく過程に光をあて、2年間のタイムスパンにおける焦点参加者の伸びを分析し、記述を行った 本年度は研究参加者13人の中から合目的的サンプリングを行い、「英語力はEMI受講に必要な閾値前後(TOEFL ITP 500点以上550点未満)であり、初期には困難を抱えながらも、ゼミ2年間を通して議論をリードするまで第二言語インタラクション能力を発達させた」学習者1人を焦点参加者として選定し、その学習者の伸びと心的変化を2年間におよぶ成長をナラティブ形式(narrative-oriented case study)で示した。 そのなかで、さらに以下4点を明らかにした。①英語の習熟度や、先輩・後輩といったコミュニティにおける位置づけが、グループ・ディスカッションのターンテーキングに影響を与えていた。一方、先輩というポジショニングは、後輩を参加させる配慮にも働いていた。②内容理解を深めることにより、参加者はディスカッションに自信を持って参加することができた。③インタラクションのレパートリーに対する意識の高まりと、その戦略的な使用が、グループ・ディスカッションへの参加を促進させた。④ディスカッションする力の発達には、クラスコミュニティ内において排除されることなく、充分にインタラクションへ参加することが不可欠であった。
|