ソフトウェアは絶えず変わる現実物理空間で適切に機能するために、環境の変化に適応する能力が必要とされる。この能力を持つためには、安全性を強化するソフトウェア工学(SE)の動的要求駆動や、効率性を最大化する人工知能(AI)の強化学習などの技術が研究および活用されている。本研究は、環境の変化に基づいた安全性要求の実行時の調整と、要求に応じた方策の更新を通じて、安全かつ効率的な自己適応を実現するハイブリッドな適応フレームワークを開発することを目指した。本研究では、具体的に以下の三つの項目に焦点を当てて実施された。 項目(1):動的要求駆動における安全性要求の高速決定手法が開発された。具体的には、(1-1) 環境変化の差分情報を活用して分析空間の変化分のみを特定する差分分析手法、および(1-2) 分析の粒度を動的に調整し、状態の爆発を抑える粒度調整手法が提案された。 項目(2):強化学習における知識転移手法が確立され、要求と環境の変化に対応する再学習の効率が向上された。具体的には、(2-1) システムの動作環境、要求、アーキテクチャの変化に適応可能なメタ学習手法、および(2-2) 要求工学のゴールモデルを用いた遷移学習とカリキュラム学習の組み合わせ手法が提案された。 項目(3):上記二項目の評価のために、自動倉庫ロボットシステムを想定したArduinoロボットシステムが開発された。評価実験では、このロボットシステムを使用して、障害物をはじめとした物理空間の不確実性を現実的に再現された。
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