自閉スペクトラム症を持つ人(以下,ASD者)は,インタラクションする相手が定型発達者(以下,TD者)の時,円滑に行うことができないこと時が多いが,ASD者同士(TD者同士)ではインタラクションが円滑に行うことができることがある。そこで本研究では、お互いが持つ世界観や価値観が似たもの同士だとインタラクションが円滑に行うことができる可能性を提案している「二重共感問題の理論」に対して、個体間脳波同期に着目して検証を行った。 まず、実験で初めて出会う「初対面ペア」と実験以前で既に知り合っている「知り合いペア」を対象に、タッピング課題中の脳波を二人同時に計測を行い、両ペアの脳波同期ネットワークの幾何学的特徴を比較した。その結果、初対面ペアの方が知り合いペアよりお互いの脳波が密に同期していることが明らかになった。一般的に、知り合いペアと初対面ペア同士の価値観・世界観の類似性を相対的に比較したとき、知り合いペアのほうが初対面ペアより類似している可能性が高い。しかし、本研究では初対面ペアのほうがお互いの脳波が同期することが観測されたことから、初対面ペアだからこそ働く相互予測が脳波同期を引き起こした可能性が示唆される。本研究は2024年3月にScientific Reportsに掲載された。 さらに、インタラクションにおいて、お互いの行動を予測する必要とする課題を作成した。具体的には,PC画面上部からボールが落下し,2人のどちらかがキャッチを行うインタラクション課題を作成した(「ボールキャッチ課題」と命名した)。22名(11ペア)に対し実験を実施し,行動・脳波データ及び自閉症傾向の得点(AQ)を取得した。その結果,2人のAQ類似性と脳波同期性(シータ帯域)との間に負の相関があることが明らかになった。今後はさらに分析を進め、論文投稿を行う予定である。
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