直径がnmオーダーの1次元の金属ナノ構造体である金属ナノワイヤー(MNW)は、直径を小さくすることで特異な性質を示すことが予想されている。しかし、従来法ではMNWを直径サブnmで精密制御しつつ単離することは不可能である。本研究では、層状ケイ酸塩というSiO4四面体からなる2次元の結晶性ナノシートが積層した物質の表面に存在するサブnmスケールの溝に着目し、層が閉じた状態で金属を析出させ、その後層を開くことでMNWを取り出すという新規鋳型合成法の開発を目指している。 本年度は主に層間で金属ナノ粒子を作製するための条件検討を行った。金属源としては標準電極電位が大きく確実に還元可能なAuイオンを用いて、層状ケイ酸塩のシリル化誘導体と混合することで、層間での金の析出を試みた。得られた試料を電子顕微鏡観察したところ、数nm程度のナノ粒子と数百nm程度の粗大粒子が観察された。また、固体29Si NMRよりSiH基の量が減少していることが確認されたことから、層間のSiH基と金イオンの反応により層間に金ナノ粒子が析出したと考えられる。試料断面の電子顕微鏡像を測定すると、層を押し除けるように小さな粒子が析出している様子も観測された。このような層間での粒子成長時のシリケート層の変化を電子顕微鏡で確認できたのは初めてである。さらに、試料の王水洗浄により外部析出している粗大粒子を除去し、層間に粒径数nmの金ナノ粒子が存在することを確認した。さらに作製した試料の触媒活性についても調査した。
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