研究課題/領域番号 |
22J21564
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
藤井 愛実 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | インテーク / ラムジェット / スクラムジェット / モデル化 / バズ |
研究実績の概要 |
本研究は,超音速/極超音速インテークの低コストな設計を実現するための,インテーク性能モデル構築を目的としている.本年度は,インテークで発生するバズを対象に数値解析を行い,解析結果の妥当性検証と,インテーク出口ノズル開度がバズ特性に与える影響を調査し,バズのメカニズム解明を図った. まず,計算格子の作成を行い,数値解析結果の格子依存性を調査した.さらに,時間刻み幅依存性調査や,実験結果との比較も行った.これらを通し,数値解析の妥当性を確認した. 数値解析の結果,バズが発生している際はインテーク内部の静圧が振動していた.バズ1周期のうち静圧上昇期間では,インテークへの流入流量が流出流量を上回ることで,インテーク後方から高圧領域が拡大し,これに押される形で衝撃波がインテーク内部を前進することが確認された. また,インテーク出口ノズル開度を変更した数値解析を通し,インテークからの流出流量がバズ特性に与える影響を調査した.その結果,バズの静圧上昇期間は,その特徴から2期間に分割できることが分かった.静圧上昇期間前半では,高圧領域の圧力上昇速度および衝撃波の前進速度はどちらも流出流量の影響を受けなかった.一方で,静圧上昇期間後半は,流出流量の減少に伴い,高圧領域の圧力上昇速度,および衝撃波の前進速度が増加した.このことから,静圧上昇期間前半は移動衝撃波理論,後半はインテーク全体での質量保存則によって現象が支配されている可能性が示唆された.これらの結果をまとめ,学会2件で発表した. バズは,極超音速航空機の実現に向けて対策を必須とする現象である.本年度の研究により,バズの支配メカニズムが移動衝撃波理論と質量保存則である可能性を示し,そのメカニズム解明とモデル化に向けた一歩となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はまず,CFD解析における乱流モデルの変更,格子依存性調査,時間刻み幅依存性調査,実験結果との比較を行い,インテークの定常/非定常作動状態ともに,CFD解析による現象の再現を可能にした.これをもとに,今年度は主にインテークで発生する非定常現象であるバズについて調査を行った.その結果,2つのことが明らかとなった.1つは,バズ現象の概要である.バズ1周期のうち静圧上昇期間では,インテークへの流入流量が流出流量を上回ることで,インテーク後方から高圧領域が拡大し,これに押される形で衝撃波がインテーク内部を前進することが明らかとなった.2つ目は,静圧上昇期間の支配メカニズムである.流出流量を変更したCFD解析を行った結果,衝撃波移動速度の流出流量への依存性の有無が,静圧上昇期間の前半と後半で異なったことから,それぞれ別のメカニズムによって支配されていることが明らかとなった.静圧上昇期間前半は移動衝撃波理論,後半はインテーク全体での質量保存則によって支配されている可能性が示唆された.以上より,本年度はバズをCFD解析で再現し,その静圧上昇期間の支配メカニズムが示唆されたと総括できる. なお,当初計画していた,定常作動状態とバズの静圧低下期間のモデル化は行わず,静圧上昇期間のモデル化に注力するよう計画を変更した.これは,CFD解析の結果,静圧上昇期間のメカニズムが事前の想定より複雑であったためである.結果,静圧上昇期間の支配メカニズムが複数種類存在することを明らかにし,それぞれ移動衝撃波理論と質量保存則である可能性を示すなど,学術的に価値の高い結果が得られた.よって,本研究課題は「おおむね順調に進展している」と評価する.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,バズの静圧上昇期間における衝撃波の移動メカニズムが,移動衝撃波理論とインテーク全体を対象とした質量保存則の2つである可能性を示した.一方で,インテーク内温度変化の支配メカニズムは未だ明らかとなっていない.そこでまず,実際に静圧上昇期間の衝撃波の移動をモデル化することにより,衝撃波の移動メカニズムが前述の2つであることを証明する.さらに,インテーク全体へのエネルギー保存則適用を通し,インテーク内平均温度のモデル化を試みる.また,インテーク内部の温度分布については,インテーク内部の流体の相互作用を考えることで,支配メカニズムを検討する.これらを通し,静圧上昇期間の長さの予測モデルを構築する. さらに,バズの静圧低下期間についてもメカニズム解明とモデル化を行う.これは,静圧低下期間ではインテーク前方へ衝撃波が前進することや,インテーク内部から流れの逆流が発生することを考慮し,ヘルムホルツの共鳴器とのアナロジーや,質量保存則によるモデル化を試みる.これらを通し,静圧低下期間の長さの予測モデルを構築する. 一方で,定常作動状態については,臨界状態のモデル化を行う.これは,主流マッハ数や迎角,インテークスロート高さなどを変更しパラメトリックにCFD解析を行うことで,インテークが臨界状態となる際の特徴量を特定し,定常臨界モデルを構築する. この定常臨界モデルの,バズモデルへの応用も行う.これは,バズの静圧上昇期間と静圧低下期間の切り替わりの際の衝撃波構造が,定常臨界状態と定性的に類似していることを利用する.これらを通し,周波数や圧力振幅を予測できるようなバズモデルの構築を目指す. 最終的には,機体統合形態での解析も行い,機体境界層がインテークに流入する影響も考慮したモデルの構築を行う.
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