研究課題/領域番号 |
22J22021
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
会田 和広 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | ジルコノセン / 可視光レドックス触媒 / 環状エーテル / 位置選択性 / ラジカル |
研究実績の概要 |
環状エーテルは多様な不斉情報をもつ。これらのC-O結合を自在に開裂し、官能基化できれば、有機合成的価値の高いキラルビルディングブロックを効率的に供給できる有用な分子変換となり得る。これまでの環状エーテルのC-O結合開裂は、強力なブレンステッド酸やルイス酸を利用したイオン開裂が一般的であり、環状エーテルは通常、求電子剤として振る舞う。一方、環状エーテルをラジカル機構で開環できれば、求核的なラジカル種としても利用できる。C-O結合の均等開裂反応の代表的な例として、チタノセンを用いたエポキシドの開環反応が知られるが、開環可能な環状エーテルは主にエポキシドに限られた。本研究では、独自で開発したジルコノセンと可視光レドックス触媒系を用いて、これまで開環の困難であったTHFなどの環歪みの小さな環状エーテルの開環に挑む。 本年度は、ジルコノセンと可視光レドックス触媒系を用いたエポキシドの開環反応の条件をもとに、THFを開環できる条件を探索した。その結果、基質適用範囲に限りはあるものの、THFを開環可能な反応条件を見いだした。また、類似の反応条件において、アルキルクロリドの脱塩素化反応を論文として報告し、オキセタンの位置選択的な開環反応を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、ジルコノセン/可視光レドックス触媒系において、独自で合成したジルコノセン触媒を利用することで、THFを開環可能な反応条件を見いだした。未だ開環可能なTHFに限りはあるものの、本触媒系が環歪みの小さなTHFのC-O結合を開裂させることが明らかとなった。 また、独自で開発したジルコノセン/可視光レドックス触媒を利用したエポキシドの開環反応の反応条件をもとに、アルキルクロリドの脱塩素化反応を論文として報告した。本反応では、脱塩素化後に生じたラジカルを水素化するだけでなく、ホウ素化することにも成功した。加えて、反応機構解明研究や競合実験にも取り組んだ。これらの結果は、今後のTHFの開環反応における反応機構の考察に役立つと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、オキセタンの開環反応における基質適用範囲を調査し、論文を投稿する。 本論文投稿後は、より幅広い置換様式のTHFの開環を目指す。THFの開環を達成するにあたり、まずはジルコノセン触媒の改変に着手する。具体的には、THFへの一電子移動を促進するため、より電子豊富なジルコノセン触媒の合成に取り組む。反応条件の最適化後には、官能基化にも取り組む。 上述した成果の論文投稿後は、位置選択性の逆転および向上を目指す。そのために、添加剤であるチオウレアを合成、検討する。位置選択性を考察する際には、より詳細なジルコノセン触媒およびチオウレアの検討が必要になるが、量子化学計算や機械学習などと組み合わせることで、迅速に最適化できると考えている。
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