研究課題/領域番号 |
22J22076
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
秋元 瑞穂 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 睡眠 / 寝室内環境 / 温熱環境 / 換気 / 二酸化炭素 |
研究実績の概要 |
本研究の最終的な目的は、個人の睡眠環境が睡眠の質に与える影響を明らかにし、得られた知見をもとに睡眠の質の予測に特化したモデルの開発を目指すことである。「自宅寝室内睡眠実測」と「睡眠に関するオンラインアンケート調査」の2つのテーマを並行して研究していく。 当該年度において、就寝時の人体を取り巻く環境が睡眠の質に与える影響の解明を目的として、自宅寝室内睡眠実測調査を実施した。規則的な睡眠習慣を持つ20代~60代男女を対象に、実測対象者の自宅寝室にて睡眠実測調査を行った。小型の可搬型睡眠実測用脳波計を用いて実測対象者の脳波を測定し、睡眠段階の判定による詳細な睡眠の質の評価を行い、同時に寝室の温熱・音・光・空気環境を測定し、寝室内物理環境を多角的に分析した。さらに、寝室環境の中でも特に換気性状と温熱環境が睡眠の質に与える影響の分析に取り組み、得られた成果を関連する国内学会、国際会議に論文投稿し、口頭発表を行った。寝室内の換気性状は、室内の換気回数を用いて評価し、睡眠中の人体由来の二酸化炭素濃度を測定し、換気回数を算出した。 上記項目に加えて、個人の睡眠環境と睡眠の質に関するデータベースを構築する目的で、睡眠に関するオンラインアンケート調査に取り組んだ。特に、日本におけるCOVID-19流行に伴う寝室環境の変化と居住者の睡眠の質への影響に関して分析し、得られた知見を基に関連する国内学会にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在に至るまで、「自宅寝室内睡眠実測」と「睡眠に関するオンラインアンケート調査」の研究内容について取り組んできた。 自宅寝室内睡眠実測に関して、寝室環境の中でも特に換気性状および温熱環境が睡眠の質に与える影響を分析した。結果として、日本のような高温多湿な地域で寝室の換気を実施する際には、同時に除湿を行うことで睡眠時の中途覚醒発生率を低減することが実測データから示され、得られた知見は学会発表における成果になった。現在は、自宅寝室内睡眠実測調査に関してさらに研究を進めており、就寝時における寝室の窓およびドアの開閉が寝室内環境に与える影響について分析を行っている。 オンラインアンケート調査について、個人の睡眠環境と睡眠の質に関するアンケートを作成し、学生を除く東京都在住の住民(900サンプル)を対象にWEBアンケート調査を実施した。これまで、日本におけるCOVID-19流行に伴う寝室環境の変化と居住者の睡眠の質への影響の分析に取り組み、研究成果を学会大会にて発表した。COVID-19流行に伴う人々の生活様式や働き方の変化が、寝室利用時間および睡眠の質の変化に与える影響についても同様に研究する重要性が高いことが明らかとなった。 当該年度において、当初計画していた実測およびアンケート調査の実施に加えて、研究成果を対外的に発表・討論することができた。これらの成果は今後の論文執筆およびさらなるデータ分析につながる成果であるといえる。以上より、本研究課題の進捗状況についておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗を踏まえ、2023年度は、デンマークにおける睡眠実測調査およびアンケート調査の分析を予定している。申請者は2023年1月より、研究遂行を目的としたデンマーク渡航を開始しており、デンマーク工科大学室内環境・エネルギー国際研究所において研究に従事している。本研究における実測調査およびアンケート調査は、地域差を考慮して高温多湿な地域(日本)と年間を通して乾燥している地域(デンマーク)の2つの気候帯で実施し、比較分析を行うことが当初より計画されていた。特に、睡眠実測調査に関しては、自宅寝室内だけでなく人工気候室内での実施も計画しており、実際の睡眠環境の測定に加えて介入条件を用いた実験に新たに取り組む予定である。睡眠段階の判定は、2022年度に引き続き、小型の可搬型睡眠実測用脳波計を用いた「睡眠ポリグラフ検査」にて行う。なお、デンマーク工科大学室内環境・エネルギー国際研究所にて実施する研究計画は、EU一般データ保護規則General Data Protection Regulation(GDPR)およびデンマーク工科大学の倫理委員会の承認を得た上で、研究を行う。 また、2022年度に引き続き、寝室内環境が睡眠に与える影響について文献調査・研究課題の整理は継続して行う。当該分野の最新の知見を収集するとともに、これまでの実測調査で得られた知見との比較、現状の課題の把握を行う予定である。得られた研究成果について、査読付き論文や学会発表論文の執筆を進める。
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