現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は2021年度にo-アミノサリチリデンアニリン結晶が紫外光を当てると光熱効果により500 Hzの高速で屈曲することを見出した (J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 8866-8877) が、固有振動による動きは未検討であった。板状結晶の一端を固定し上面に紫外光を当てると、光熱効果による 1.5°の屈曲に付随して、微小な固有振動(~0.2°, ~773 Hz) が生じた。780 Hzのパルス光を照射すると共振により屈曲角が7.0°と大きく増幅された。エネルギー変換効率は0.22%であり、既報のフォトメカニカル結晶の中で最も高い効率を達成した。 続いて、紫外光のみならず可視光や近赤外光でも動く結晶を開発するため、400 nm未満の紫外領域から可視、近赤外光の広い領域 (400-850 nm) まで吸収をもつソルベントグリーン結晶に注目した (Chem. Mater. 1997, 9, 1319-1327) 。粉末X線回折測定の結果、a軸方向に220 MK-1の大きな熱膨張を示すこと、3点曲げ試験の結果、弾性変形を示すことがわかった。以上の結果より、ソルベントグリーン結晶は紫外光のみらなず可視光や近赤外光で大きく、しなやかに動くことが期待された。一端を固定した針状結晶の上面に紫外光を照射すると、光熱効果による 1.1°の屈曲に付随して、~70 Hzの固有振動が見られた。70 Hzの紫外パルス光を照射すると共振により屈曲角が11°まで増幅された。この屈曲は450 nmの青色光、520 nmの緑色光、638 nmの赤色光、810 nmの近赤外光でも誘起できた。さらに400-2000 nmの波長の連続光を含むハロゲンランプでも、高速で大きな屈曲を創出できた。 また再沈法を用いて形状・サイズの揃ったm-ニトロサリチリデンアニリン結晶の作成にも成功した。
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