研究課題/領域番号 |
21J23423
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 新潟医療福祉大学 |
研究代表者 |
五十嵐 小雪 新潟医療福祉大学, 医療福祉学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 反応抑制機能 / proactive inhibition / reactive inhibition / 感覚モダリティ |
研究実績の概要 |
反応抑制機能は、日常生活や運動時において欠かすことのできない実行機能の1つであり、感覚入力の種類(感覚モダリティ)が関与することが示されている。しかし、従来使用されてきた課題は、感覚モダリティによる違いを検討するうえで、いくつかの問題点が挙げられた[課題①]。また、反応抑制機能は、2つの機能(proactive inhibitionとreactive inhibition)に分類することができるが、それぞれに対する感覚モダリティの影響は明らかでない[課題②]。2021度は、課題①②に対し、感覚モダリティによる違いを検討できる課題設定を新たに構築し、作成した課題を用いて、感覚モダリティによる反応抑制機能の違いを検討した。 成人男女25名を対象に、視覚、聴覚、体性感覚刺激を用いた選択反応課題(CRT)と停止信号課題(SST)を実施した。SSTに関して、従来の課題では、Go刺激とStop刺激が異なる感覚モダリティの刺激で呈示されていたため、本研究では、同一の感覚モダリティの刺激を用いて呈示した。Proactiveおよびreactive inhibitionは、proactive inhibition time(PIT)およびstop signal reaction time(SSRT)で評価した。 その結果、聴覚および体性感覚モダリティで高いproactive inhibitionを示した。一方、reactive inhibitionでは、感覚モダリティ間で違いは見られなかった。したがって、本結果から、Go刺激とStop刺激を同一の感覚モダリティにすることで、proactive inhibitionとreactive inhibitionに対する影響が異なることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、運動学習や反応抑制機能に強く関与する皮質-基底核ループの時間的変動を評価できる手法を確立することを目的としていた。しかし、皮質-基底核ループを動員できる刺激場所を特定するためには、反応抑制機能の評価方法を確立し、新たな課題設定を構築することが必要であった。反応抑制機能には、感覚モダリティが影響する可能性が示唆されている。しかしながら、従来の課題設定では、いくつかの改善すべき点が残されており、反応抑制機能を構成するproactive inhibitionおよびreactive inhibitionに対しての感覚モダリティの影響が不明であった。そのため、新たな課題設定を構築し、視覚・聴覚・体性感覚モダリティによる反応抑制機能の違いを検討した。その結果、感覚モダリティがproactive inhibitionおよびreactive inhibitionに及ぼす影響の違いを明らかにすることができ、新たに作成した課題を用いることで、それぞれの感覚入力に対する純粋な反応抑制機能の評価が可能となった。 2021度の成果より、次年度以降の皮質-基底核ループの評価手法の確立や月経周期による皮質-基底核ループおよび反応抑制機能の変動を検討する場合の有効な実験課題として使用できることが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
運動学習やそれに関与する反応抑制機能に重要な皮質-基底核ループの時間的変動を評価できる新たな手法を確立することを目的として実験を行う。まず、この目的の達成のため、proactive inhibitionを構成するaction postponingおよびaction restraintを測定する課題の評価方法を確立する。これにより、反応抑制機能を構成するすべての機能の評価方法が確立でき、さらなる研究の発展に期待ができる。その後、2021年度および今年度で確立した新たな課題の設定・評価方法を用いて、皮質-基底核ループの時間的変動を評価できる新たな手法の確立を目指す。
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