研究課題
本年度は,線維筋痛症モデル動物における運動時の神経性循環調節機構である筋機械受容器反射の亢進機序の解明を目的とした.無麻酔除脳動物を用いたin vivoの系の実験を実施した結果,線維筋痛症モデル動物では,筋pHが低下していることが明らかとなった.さらに,線維筋痛症様症状により,下腿三頭筋の受動的ストレッチに対する血圧・交感神経活動応答が亢進するが,プロトンポンプである液胞型ATP分解酵素の阻害薬を下肢に投与することにより,その亢進が抑制されることが明らかとなった.また,分子生物学的手法を用いて,線維筋痛症モデル動物の筋機械受容器反射の求心路を担う脊髄後根神経節(DRG)において,酸感受性を有するイオンチャネルであるtransient receptor potential vanilloid 1(TRPV1)と,酸感受性イオンチャネル3(acid sensing ion channel 3, ASIC3)の発現を検討した.その結果,線維筋痛症モデル動物は対照動物を比して,DRGにおけるASIC3の発現が増加していることが明らかとなった.現在までのところTRPV1の発現については,有意な増加は観察できてない.そのため,TRPV1のリン酸化に着目して分子生物学的評価を継続している.以上の本年度の成果とこれまでの研究成果により,線維筋痛症モデル動物における筋機械受容器反射の亢進は,液胞型ATP分解酵素を介した骨格筋の酸性化により惹起され,少なくともASIC3が関与していることが示唆された.
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Scientific Reports
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