研究課題/領域番号 |
21J40038
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
杉本 温子 藤田医科大学, 医学部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | EBV / ウイルス発がん / 前潜伏感染期 / 溶解感染 |
研究実績の概要 |
エプスタイン・バールウイルス(EBV)は、ガンマヘルペスウイルス亜科に属するヒトヘルペスウイルスである。EBVは上咽頭癌、胃癌、バーキットリンパ腫などの悪性腫瘍との関連が指摘されているがんウイルスであり、臨床上重要なウイルスであると言える。EBV感染症及び関連がんの克服のためには潜伏感染成立までの期間(「前潜伏感染期」と呼ばれている)においてどのようなウイルス遺伝子が発現し、宿主因子が制御されているか研究することは非常に重要である。これまでの年度の研究において、EBVの前潜伏感染期で必須の遺伝子であるIMPDH2を同定している。IMPDH2は非ウイルス性のがん細胞の増殖に必須の因子として同定され、がん細胞の細胞内代謝を変化させることで増殖を亢進させ、その結果、がん細胞の核小体を肥大化させる。本研究において前潜伏感染期の細胞でIMPDH2の発現が亢進し、核小体の肥大化が起きていることを発見している。また、IMPDH2阻害剤を用いて活性を阻害した結果、前潜伏感染期の細胞増殖および不死化成立は著しく低下した。本年度の研究では、これらの発見をさらに発展させるべく、EBV感染におけるIMPDH2の意義をさらに検討した。siRNAを用いてIMPDH2をノックダウンした結果、核小体の大きさは減少しており、前潜伏感染期の初代培養細胞・細胞株いずれにおいてもIMPDH2の発現レベルと核小体の大きさに強い相関が見られた。また溶解感染において蛍光免疫染色およびRNA-seqを実施した結果、溶解感染誘導後、核小体関連タンパク質の発現は上昇していた。今後はこれらの現象と、IMPDH2の発現の相関を検討する予定である。 また、これらの研究結果を論文にまとめ、現在投稿中である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画立案当初からの本研究の最終目標は「不均一な状態であるEBV初感染状態について、画像解析を用いることで質的・量的双方の側面から解析を行い、潜伏感染成立に必要な因子を解明することを目指す」ことである。本研究計画は、これまでの年度の研究において、IMPDH2と核小体関連タンパク質という、EBVの感染状態を示す非常に有望な宿主因子を見出すことに成功している。また、本年度は研究対象を溶解感染に広げ、IMPDH2及び核小体の挙動の解析も行なっている。次年度の研究ではIMPDH2関連タンパクに焦点を当て、溶解感染も詳細に解析することで、EBVの生活環に必須である因子の同定に繋げたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究結果より、同定した因子であるIMPDH2は潜伏感染成立のみならず、溶解感染においても重要な因子であることが示唆された。また、IMPDH2をノックダウンしたEBV感染細胞では核小体の大きさが著しく変化しており、IMPDH2の発現レベルと核小体の大きさに強い相関関係があったが、これらがEBVの生活環にどのように関わっているのか、詳細に解析する必要がある。今後は引き続きIMPDH2と核小体関連タンパク群に焦点を当て、網羅的手法も用いつつ、EBV感染にどのように関わるか、解析を進めたい。
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