これまでの研究において、初代培養B細胞にEBVを感染させると、核小体が肥大化することを発見している。核小体の肥大化は非ウイルス性のがん細胞においてよくみられる現象であり、IMPDH2という分子が関わっていることが知られている。EBV初感染細胞においてもIMPDH2の発現が上昇していることが確認され、核小体の肥大化が起こることがわかった。EBV感染細胞においてIMPDH2阻害剤を添加すると、EBVによる細胞の不死化は起こらず、核小体の肥大化も観察されなかった。これらのことから、これまで研究において、EBVの潜伏感染成立のためにはIMPDH2が核小体の肥大化を起こすことが必須であることが示唆された。本年度はこれらの発見を発展するべく、IMPDH2とウイルスの生活環に焦点を当てて研究を行った。EBV発がんには溶解感染状態の細胞の関与も示唆されていることから、溶解感染を解析することは重要である。そこで、本年度はまず溶解感染に焦点を当てて核小体の形態について観察を行った。電子顕微鏡での観察および蛍光免疫染色を用いた観察において、核小体が形態変化を起こしていることが示唆された。核小体は特にタンパク質新生に関わる細胞小器官である。核小体は膜に包まれておらず液液相分離によって形成されていると言われている。また、核内環境の変化によって構成するタンパク質が変化することも示唆されている。そこで、核小体タンパク質を用いて免疫沈降-質量分析を行い、溶解感染時に核小体に含まれるタンパク質を解析した。その結果、いくつかのウイルスタンパク質が同定された。また、予想通り潜伏感染状態の細胞と、溶解感染状態の細胞では核小体を構成するタンパク質群が変化することがわかった。
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