研究課題/領域番号 |
22J01585
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋外国語大学 |
研究代表者 |
村山 木乃実 名古屋外国語大学, 世界教養学部, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 神秘主義 / イスラーム / イスラーム神秘主義 / 現代イラン / 聖典解釈 / ペルシア文学 / 古典詩 / 現代知識人 |
研究実績の概要 |
本研究は、コーランをムハンマドによって作られたものだとみなす、イスラムの根幹を揺るがすようなソルーシュのコーラン解釈が、彼のペルシア古典詩解釈を通じた神秘主義理解によって可能になったことを明らかにし、イスラム思想の多様性を提示することを目的としている。 2022年度では、当初の計画通り、ソルーシュの主著『ムハンマドの言葉、ムハンマドの夢』の分析を進めた。この分析と並行して、ペルシア古典詩をめぐる現代イランの状況を検討した。この研究成果は、日本宗教学会第81回学術大会にて「現代イランにおける古典文学の検閲にみるイスラムと文学の関係」というタイトルで発表を行った。 12月には、東京ジャーミイで行われたコンサートで使用するペルシア詩の翻訳を行ったほか、アメリカでソルーシュにインタビューを行った。このインタビューはペルシア語で行われたが、後に書き起こし、翻訳をした。インタビューの翻訳は、『ペルシア語文学会通信』のなかに収められ、刊行された。東京ジャーミイでの翻訳も、2023年度に解説を付して刊行される予定である。 3月には、龍谷大学国際社会文化研究所の指定研究プロジェクト「異文化理解と多文化共生―仏教・キリスト教・イスラームの実践的対話に向けた比較宗教学」 にて、イスラームの観点から発表に対してコメントした。 また、以上の研究に加え、前年度に提出した博士論文の書籍化の準備を進めた。この成果は、2023年度研究成果公開促進費を使用して出版される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年目に予定していたソルーシュのインタビューを行えただけでなく、当初予定していなかった研究テーマを発見することができたという点で、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度以降は、当初の計画通り進めていく予定である。 2023年度は、①2022年度から行なっている、研究対象であるイラン現代知識人の著作の分析および翻訳を進め、②実際にインタビュー調査を行い、③成果発表を行う。 インタビュー調査は、2023 年12月から2024 年1月にかけて、北カリフォルニアイスラム文化センターで調査を行う。研究滞在中は、ソルーシュへのインタビューのほか、ソルーシュが同センターで行っているペルシア古典詩注釈講義にも参加する。講義への参加は、次の2 点において有効である:①まだ書籍としてまとめられていない、ペルシア古典詩注釈に関するソルーシュの最新の見解が確認できる点、②講義後の質疑応答時間で質問ができる点である。 2024年度は、研究のまとめ及び成果発表を行う。これまでの著作分析とソルーシュとの議論を踏まえ、研究をまとめる。研究成果は、まず、「日本宗教学会」の年次大会でこれまでの成果を英語で発表し、参加者と意見交換を行う。この年次大会には、毎年、仏教、キリスト教、イスラムなど様々な宗教を専門とする研究者が参加しているため、多様なオーディエンスが予想される。さらに、同学会で英語で発表することにより海外から参加した研究者との交流も図ることが期待でき、有意義なフィードバックを得られる。次に、研究発表で得られたコメントを十分に反映させた上でこれまでの研究成果を投稿論文としてまとめる。投稿予定先は日本宗教学会の査読付国際専門誌Religious Studies in Japanを予定している。これらの作業と平行しながら、単著としての出版を目指す。
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