研究実績の概要 |
KSHVターミナーゼ複合体は3種類のKSHVタンパクORF7・ORF29・ORF67.5で構成されると推測されているが、これらの機能は全く不明であった。2022年度は、KSHVタンパクORF7の機能解析を実施した。ORF7を欠損したKSHVを作製し、これの感染モデル細胞を用いて、ORF7のウイルス学的特徴づけを行った。その結果、ORF7欠損KSHVは感染性ウイルスを産生できず、感染細胞内には粒子状構造物を複数含む形態の未成熟カプシドが多数観察された。この未成熟カプシドは未だ定義されていない新たな形態のカプシドであり、これを”Soccer ball-like capsid”と名付けた。また、ORF7欠損KSHVはウイルスゲノム前駆体からのウイルスゲノムの切断能を欠如していた。さらに、ORF7の持つジンクフィンガーモチーフ(Zf)のORF7機能における重要性についても検討した。ORF7欠損によって生じたウイルス産生量の減少は、野生型ORF7の補充によって復帰させることが可能であったが、Zf変異型ORF7では、これを復帰させることができなかった。続いて、Zf変異型ORF7保持KSHVを作製し、これのウイルス学的特徴づけを行った。その結果、Zf変異型ORF7保持KSHVは感染性ウイルス産生を行うことができず、また、適切なウイルスゲノム切断能を保持していなかった。以上のことから、ORF7はKSHVターミナーゼ機能に必要であり、特にORF7の持つZfが重要であることを明らかにした。これらの研究成果は、米国微生物学会の機関誌 Journal of Virologyにて発表を行った(Iwaisako Y et al., J Virol, 2022)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は前年度、KSHV ORF7がKSHVターミナーゼ機能に対して重要であることを明らかにすることができた(Iwaisako Y et al., J Virol, 2022)。また共著者として、テグメントタンパクであるKSHV ORF21が、感染細胞でのMEKのリン酸化を亢進することで、新規感染を促進することを報告した(Yamaguchi T, Watanabe T, Iwaisako Y et al., Int J Mol Sci, 2023)。そして、申請者が来年度に実施予定であるKSHV ORF29及びORF67.5の機能解析に必要な、これらORFの欠損KSHVの作製にも既に成功した。以上のことから、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断する。
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