圧密により磁気特性がどのように変化するかを明らかにするために,圧密試験と岩石磁気測定を組み合わせた実験を行った.房総半島前弧海盆にて採取した泥質岩ブロックから円柱形の供試体を作製し,これまでの研究で構築した圧密試験用圧密容器を用いて圧密試験を実施した.圧密試験の前後で初磁化率の異方性(AMS)と非履歴性残留磁化(ARM)を測定したほか,試料に含まれる磁性鉱物の特徴を把握するために振動試料磁力計(VSM)を用いて測定を行い,ヒステリシス曲線を得た.ステレオネットを用いて,初磁化率の最大軸,中間軸,最小軸の方位について解析を行ったところ,今回用いた試料では,供試体の最小軸が圧密方向と平行に配列し,最大および中間軸が圧密方向と直交する平面内に分布が確認された.この配列は,圧密実験の前および後の両方で確認された.また,AMSの測定結果を用いて作成したフリン図によると,本供試体では圧密試験後に面構造の発達度合いが増加している様子が確認された.本供試体に対するARM測定結果からは,圧密方向に直交する平面内で残留磁化が増加することが判明した.本結果は,フリン図が示す面構造の発達度合いが増加したことと整合的である.本供試体と同一層準の試料が示すヒステリシス曲線は,強磁性鉱物の寄与が大きいことを示しているため,今回明らかとなった圧密後のARMの増加が,磁性鉱物の回転を示している可能性が高い.今後は,圧密による磁性鉱物の回転の様子を定量的に捉えるために供試体の数を増やして圧密実験を行い,また保磁力の大きい磁性鉱物に対する圧密の影響を確認するために,等温残留磁化(IRM)測定を追加実施する予定である.
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