研究実績の概要 |
本研究は,我が国における思春期小児の健康状況と近隣環境との関係性を解明することを目的とした. 質問紙で調査した我が国の全地方を網羅する21,491名の思春期小児の健康状況に関する質問紙データに,地理情報システムを活用して入手する近隣環境の位置情報を組み合わせ,マルチレベル分析によって関連を検討した.得られた主要な知見は後述のとおりである.①小児の身体活動に対して,多くの物的環境要因が有意な関連を示したことから,文脈効果の存在が示唆された.②小児の身体活動に対して,平均気温が一貫して正に関連していたことから,気温が高いことが小児の身体活動を促す可能性が示された.③小児の身体活動に対して,学校種や社会経済環境の高低によって関連する建造環境要因が大きく異なり,発育段階や地域の社会経済環境に応じて柔軟な建造環境の整備が必要であることが示唆された.④小児の肥満傾向に対して,社会経済環境が関連することが明らかになり,構成効果が存在することが示唆された.⑤小児の肥満傾向に対して,社会経済環境が関連する方向性が発育段階によって異なることが明らかとなった.これらの結果は,第44回日本肥満学会・第41回日本肥満症治療学会学術集会,日本発育発達学会第22回大会にて発表を行った. また,COVOD-19罹患の健康格差に関しても着目し,小児のCOVID-19罹患に関連する近隣の社会経済環境要因も明らかにした.その結果,特に,小児のCOVID-19罹患に対して卸売・小売業の就業率の高さや学歴の低さが顕著に関連することが示され,今後のCOVID-19や他の感染拡大に対して,重点を置くべき領域を示唆した.これらの知見は,国際学術雑誌"Children"に掲載され,医学系インターネットメディアに取り上げられた. 2024年3月には,これらの結果をまとめた内容を日本発育発達学会第22回大会のシンポジウムで発表した.
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