研究課題/領域番号 |
21J00100
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
黒瀬 にな 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 鎌倉幕府 / 本所裁判 / 訴訟手続 / 文書機能論 |
研究実績の概要 |
(1)前年度から継続して、(1-1)鎌倉幕府御家人につき、所役賦課やネットワークのあり方を事例に即して検討した。その結果として、幕府内における訴訟の管轄基準に関し、幾許かの示唆を得た。(1-2)文献および研究会等により、(公家社会を中心とする)主従関係論・荘園制論の先端的研究状況について、情報を収集し咀嚼を図った。 (2)土地法関係の訴訟手続について、鎌倉期から室町期におよぶ視程で文献の比較検討をおこなった。 (3)本所裁判に関する事例・史料の収集と分析を進めた。(3-1)主として、文永年間の近江国伊香立荘対葛川の相論を取り上げ、手続に関わる論理や訴えの経緯に留意して訴訟文書の機能的分析を行い、中間的結果を口頭報告した。本報告では、訴訟手続を進行させる書札用文書の動きを復元した上で、訴訟の型(構造)に関する当事者の認識および主張が、手続の展開に応じて刻々と変化する様子を指摘した。報告後は改めて史料調査・事実関係の洗い直し作業等を継続中である。(3-2)また、北野社領をめぐる鎌倉後期の朝廷・六波羅裁判事例の検討も行い、史料調査(文字・丁数の校訂作業が主)を実施した。 (4)〈訴訟と陳情との関係〉についての考察枠組みを再検討した(事案分析を支える参照軸の増強作業)。文献調査や学会の議論から、欧州における司法利用現象の説明手法や、司法作用の位置づけの歴史性に関する捉え方を探り、それらと本研究課題との接合可能性ないし距離・相違点について考察し、一定の前進をみた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の計画に概ね沿って研究を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、本年度の研究結果を承けて、事例研究のまとめを中心に実施する。 まず、前年度に予備的報告をおこなった、文永年間用益紛争の事案に関して、訴訟文書分析の前提となる史料の追加調査を行い、出訴経路に関わる人物比定作業などを進めて、成果を論文にまとめ、学会誌へ投稿する。 また、並行して検討中の公家裁判事案について分析を進め、訴訟プロセスにおける「本所」の機能をその鎌倉後期的あり方に即して指摘する(公表可能な域まで持ち込む)。 上記の過程では、平安初期以来の提訴先選択問題に関する先行研究にも目配りし、それらが指摘するところの検討・取り込みを図るとともに、更新を進めてきたフレームワークを実証レベルへフィードバックすることにより、事例に即した直接的成果に加えて、さらなる研究発展の芽を取り出すこととしたい。
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