研究課題/領域番号 |
21J01646
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立命館大学 |
特別研究員 |
阪本 佳郎 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | ルーマニア亡命文学 / 作家・詩人の言語選択と記憶・生の関係性 / シュテファン・バチウ / MELE 詩の国際便 / ジャン・シャルロ / ハワイ先住民文学 / 20世紀の災厄と離散の歴史 |
研究実績の概要 |
ルーマニア亡命詩人たちの始原的範型として古代ローマの詩人オウィディウスがいることを、シュテファン・バチウの詩誌『MELE 詩の国際便』に寄稿したルーマニアの詩人たちの作品の分析を通じて描き出した論考、「オウィディウスの末裔たち」が学術誌掲載。また詩誌『MELE 詩の国際便』に集う作家たちの言語選択について述べた論文、「生きられた言語を交わす文学 シュテファン・バチウの『MELE 詩の国際便』a small worlds literature」も掲載された。バチウが、ハワイにて親交を深めたフランス生まれメキシコで壁画運動を牽引した後、ハワイに移り住み先住民世界に深く関与した詩人・壁画家、ジャン・シャルロについての報告も行った。そのハワイ語劇作を翻訳出版した。ルーマニア亡命詩人たちが持ち運ぶ特異な文化的感性の源と、それが亡命先の土地へと持ち運ばれ「他者」との交流のうちに新たな文化的地平を拓いたこと、また、その言語選択の関係性について研究を形にすることができた点で、順調な成果を生み出すことができたと言える。2022年度より繰越しした予算により在外研究を実施。2024年1月にはハワイ大学関係者に出版予定の『シュテファン・バチウ ある亡命詩人の生涯と海を越えた歌』の概要を報告した。同3月には、同じく繰越た予算により、ルーマニアのバベシュ・ボヤイ大学文学部にて講演をおこなった。シュテファン・バチウや、詩人と出生地を同じくするハンガリー人写真家フランシス・ハールら流謫の芸術家たちが、いかにルーマニア・東欧のアヴァンギャルドを遠く太平洋にまで持ち運んだかを報告、現地研究者たちと議論を深めることができた。詩人の亡命地や祖国で研究成果を還元、ルーマニア亡命文学の新たなる側面について現地研究者と共同研究の素地をつくり、今後の研究発展を期すことできたことは大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニカラグアへの渡航と現地での調査研究を予定していたが、現地情勢の悪化により渡航を断念せざるをえなかった。しかし、それに増して、代わりに渡航したルーマニアやハワイでの研究滞在を通じて、現地研究者たちとの関係性は深みを増し、これからの研究展開にさらなる期待が寄せられるようになった。 研究実績としても、「オウィディウスの末裔たち」や「生きられた言語を交わす文学」といった論文出版を通じて、成果を順調に世に問うことができたし、研究の総括とも言える単著書籍『シュテファン・バチウ ある亡命詩人の生涯と海を越えた歌』(2024年3月に出版)への執筆も順調に進められた。よって、本年度の研究活動は、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでフィールドワーク、インタビュー、文献調査で得た知見から、本研究の総括となる書物を執筆、上梓する。『シュテファン・バチウ ある亡命詩人の生涯と海を越えた歌』と題したそれは、ルーマニア出身の亡命詩人シュテファン・バチウの作り上げた文学ネットワークを詳に記述することで、ルーマニア・アヴァンギャルドたちが国境を越えて抱え運んだモダニズムがいかに伝播していったのかを跡付ける試みである。最終年度は、もっぱら本書の執筆・出版を目的とする。
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