研究課題/領域番号 |
21J22995
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
廣瀨 光了 立命館大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 色素 / クロロフィル / 酵素 / 有機合成 / 生合成過程 |
研究実績の概要 |
有機合成法を用いて、天然のクロロフィル色素を化学修飾することで、天然・非天然の基質を合成することができた。これらの合成基質の特徴的な物性を発見し、評価することができた。また、大腸菌内で発現させた酵素と合成基質との反応を生体外で行うことで、酵素がもつ基質特異性を詳細に検討した。それにより、推定されていた酵素反応機構を支持する結果を見出した。この結果は、国内学会1件、国際学会4件の発表を行うことができた。さらに、その研究結果をまとめることで、査読付きの国際雑誌に投稿することができた。 上記の内容をさらに発展させることで、酵素の反応機構を分子レベルで解明することに努めた。そこでは、計算科学の分野を利用し、酵素と天然基質をシミュレーションドッキングすることで、酵素の活性中心部だけでなく、反応機構に関わるアミノ酸残基の一部を予想することができた。上記の研究結果をまとめ、国内学会1件(招待講演)の発表を行うことができた。 また、2つの酵素を同じ反応系に入れ、生体外での酵素反応を行った。ここで用いられた2つの酵素は相乗的に働くことで、酵素反応生成物の量を加速的に生成すると考えられていた。そこで、複数の酵素が基質に連続的に反応し、最終的な色素が生成されるまでの迅速な酵素反応系を検討するため、この相乗効果(加速反応)の原因の解明を試みた。上記と同様にして様々な基質を合成し、2種類の酵素が連続的に反応したときの反応性について検討を行った。すると、2種類の酵素のうち、一方の酵素反応が可逆的な酵素反応を行うという新たな知見を得た。これにより、2連続的な酵素反応中における相乗効果の原因を解明することができた。さらに、この2連続的な酵素反応系を基盤にして、3つ以上の酵素反応を連続的に行う反応場の作製にも取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、第一の研究目的としていた「酵素の制御機構(生合成酵素の基質特異性から推測する反応機構や2種類以上の酵素同士の関係性)を含む生理学の解明」に努めた結果、クロロフィル色素の生合成経路に関わる酵素の反応機構を分子レベルで推定でき、国内外の学会で発表をこなせた点は、予想以上の成果が出たと判断できる。さらに、2種類の酵素間に特異的に存在する相乗効果の原因を解明でき、連続的な酵素反応系を確立するための基盤を作製する手がかりを得た点は、大きな成果が出たと言える。一方で、この研究成果をまとめて、学会発表を行えなかった点は、予想を大きく超えた進捗状況とは言えない。また、研究計画3年目に到達する予定であった、第二の研究目的である「生体外で生合成経路を再現した酵素反応で産生された色素が形成する会合体の形状の解明」までは至らなかった。しかし、総合的な判断として、1年目の研究成果としては、予想以上の研究結果が出せたため、研究計画以上に進展していると判断できる。しかし、3年目の研究計画をも遂行するほど、予想を大きく上回る研究の進捗状況とは言い難いため、おおむね順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度では、クロロフィル色素の生合成経路に関わる酵素の反応機構を分子レベルで予想し、その反応機構に関わるアミノ酸残基の一部を推定するところまで行うことができた。今年度では、計算科学の分野も利用して、酵素の活性中心内のアミノ酸残基をすべて予想する。その後、酵素反応に関わる特定のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基へと変換した変換型酵素を作製する。そのアミノ酸変換型酵素と合成した基質を生体外で反応させ、酵素活性を確認することで、酵素活性中心内のアミノ酸残基をすべて同定する。それにより、前年度に予想された酵素の活性中心内で行われる反応機構を分子レベルで解明する予定である。また、この研究内容を国内外の学会で発表するだけでなく、国際学術誌への投稿も目指す。 2種類の酵素反応をワンポットで連続的に行った前年度の研究では、2種類の酵素間で働く相乗効果の原因を解明した。今年度では、相乗効果を発揮する特定条件下での2種類の酵素の基質特異性を検討し、その連続的な酵素反応によって生成されるクロロフィル誘導体のライブラリーの作製を行う。ここまでの内容をまとめ、国内外の学会で発表する予定である。さらに、2種類の酵素反応系で確立した条件を基盤にして、3種類以上の酵素をワンポットで連続的に反応させる系を作製する。それにより、クロロフィル色素が生合成されるまでの過程の一部分を生体外で再現する。さらに、再現した酵素反応系で生成された色素が超分子的な自己会合体を形成する過程も観測する。以上の研究内容をとりまとめ、国際学術誌へ投稿する予定である。
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