研究課題/領域番号 |
21J23340
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
有馬 恵子 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 商店街 / 地域コミュニティ / 路上販売 |
研究実績の概要 |
今年度の調査、および過去に実施した調査データの精査と再検討を通じて、研究課題の核の一つとなる商店街の通時的変化およびその具体的現象の把握をめぐる方法論について大きな発見が得られた。具体的には、京都市出町商店街における商店主とテキ屋および新しく参入した路上商人の調査と文献資料をもとに、都市社会学における地域コミュニティ論ないしグローバル化する都市における小規模事業者をめぐる先行研究を批判的に検討した。その成果は論文「京都市出町商店街における路上販売とローカルコミュニティ:絡まり合う敵対性と協働性」としてまとめ、学術雑誌「ソシオロゴス」に投稿し、掲載が決定している(2023年10月発行予定)。 また、研究対象地域である出町エリアにおいて断続的に実地調査を実施した。そこでは、とくにテキ屋や路上販売が実施される商店街の路上や、商店街の軒先を利用した焼きいも販売に関して、従来の研究において注目がなされていない諸実践についての観察および聞き取りによる記録が得られた。さらに、近年の都市戦略や地域活性化をめぐる路上販売についての文献研究および対象地以外の実地調査を実施した。具体的には、福岡市における路上販売、北九州市における市場の調査を通じて、京都市出町の事例との比較において注目すべき新たな知見が得られた。日本における商店街の研究は、かねてより一定の研究蓄積がみられる領域であるが、本研究では路上商人というこれまで注目されてこなかった活動領域においても国内外の比較研究を視野に入れたことによって、研究を遂行するための基礎となる土台をつくることができたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、とくに過去に実施した調査データの精査と再検討を通じた理論構築の面での進展が著しく、研究課題の核の一つとなる地域コミュニティの通時的変化およびその具体的現象の把握をめぐる方法論について大きな発見が得られた。具体的には、商店街の狭い範囲内におけるネイバーフットエコノミー、すなわち商店主どうしの相互行為、商実践、祭りを介した相互交渉を検討した。その際に、地域コミュニティをめぐる先行研究を批判的に検討した。その一方で、主な研究対象地域である出町エリアでの調査に加えて、学術交流および実地調査を通じて日本国内の他地域(福岡市、北九州市)にも目を向けた。調査を通じて、研究蓄積および現状の把握を進めたため、研究課題を進めるにあたって示唆的かつ応用可能な知見を数多く得ることができた。 具体的には、地域活性化やまちづくり活動を目的として市町村レベルで企画、遂行されているプロジェクトの調査、実地調査を通じて、研究対象地の事例との比較において注目すべき新たな知見を得た。これまでのデータや実地調査を経たうえで、グローバル都市論、創造都市論、地域コミュニティ論といった先行研究と比較検討し、地域コミュニティの変化を理論的に把握するための視座として活用するという新たな着想を得ることができた。実地調査において感染症流行の影響は一定程度あったが、国内の比較研究を視野に入れたことによって、文献研究をもとに本研究を完成させるための基礎的な枠組み作りを進めることができるようになったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
感染症流行の調査への影響は今後も一定程度継続するとみられるが、国内外の地域コミュニティ研究の比較検討から研究を遂行するという着想をもとに、今後さらに学問領域を問わず広く関連文献を精査していく必要があると考える。なお、現在学会誌に投稿中の論文2本の執筆を通じて、出町エリアに流入する小規模自営業者、路上商人らのミクロな実態と、元からの地付の商店主、警察からの鑑札を得て路上での商売を取り仕切るテキ屋との相互交渉の過程が明らかになった。今後はこれを博士論文として発展させ、創造都市論や都市行政とは別の知見から、地域における商実践と、その実践の過程に見られる意思決定や企画遂行の過程をめぐる事例の検討を進めていく。
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