研究課題
本研究では、肥満に伴いアテローム性動脈硬化を発症するモデル動物を用いて、有酸素性トレーニングにより分泌増大したirisinがアテローム性動脈硬化リスクの低下に関与するか否か、さらにその分子機序を明らかにすることを目的とした。昨年度までに、有酸素性トレーニングによるirisin分泌の増加が内皮型一酸化窒素合成酵素であるeNOSタンパク発現の増加とともに血管内皮機能を改善し、血管内の脂肪沈着を抑制する可能性が示された。今年度は、骨格筋におけるirisinの前駆体であるfibronectin type III domain containing 5(FDNC5)mRNA発現を測定したところ、ApoE欠損マウスの有酸素性トレーニングによって増加した。血中irisin濃度と骨格筋FNDC5 mRNA発現との間には正の相関関係が認められた。さらに、有酸素性トレーニングによるirisin分泌の増加がアテローム性動脈硬化を抑制する機序として、動脈血管の炎症物質を評価した。ApoE欠損マウスの有酸素性トレーニングにより、炎症性サイトカインであるtumour necrosis factor-α(TNF-α)、interleukin-6(IL-6)タンパク発現および白血球を血管壁に接着させるintercellular cell adhesion molecule-1(ICAM-1)、vascular cell adhesion molecule-1(VCAM-1)mRNA発現は低下した。これらの結果から、有酸素性トレーニングによる骨格筋からのirisin分泌の増加がeNOSタンパク発現の増加とともに血管内皮機能を改善、血管の炎症を抑制し、アテローム性動脈硬化を抑制する可能性が示唆された。
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