研究課題/領域番号 |
22J10690
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
WANG QIONGHAI 立命館大学, 先端総合学術研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 音画 / アニメーション / 今村太平 / 原形質 / 漫画映画 / 記録映画 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦時下日本アニメーションの領域で使われた特殊な言葉「音画」を中心に、その歴史、メディア・思想的な意義を検証するものである。令和4年度では以下のように研究を進めた。 ①アニメーション理論では、エイゼンシュテインが提出したキャラクターの輪郭線が視覚的不定形である「原形質性」の理論が存在するが、戦時下の日本において、この「原形質性」と似たような理論が今村太平によって主張され、提出された。本研究はこの今村太平の主張を検証し、視覚のみならず音声とその聞取環境も重視する「音画的原形質性論」の存在を明らかにした。この内容は『コア・エシックス』第19巻に掲載された。 ②戦時下において、今村太平はアニメーションのプロパガンダへの転用に関わった人としてよく研究の対象とされていた。今村の理論はアニメーションとプロパガンダ的ドキュメンタリーの理論的関係性がよく指摘されるが、明確に論じられてこなかった。本研究では今村の記録映画論を彼の私小説論と繋ぎ、そのテキストから「主観をもって客観を記録する」というテーゼを抽出し、その実態を検証した。この内容を表象文化論学会の第16回研究発表集会プログラムで学会発表した。 ③今村太平がアニメーションとプロパガンダの関係性に注目したのは、映像による記録に虚構と現実、個人と集団などの問題がもっとも先鋭的に現れていると考えているためである。その考えの背後には、プロキノによるトップダウン型な共産主義プロパガンダとアヴァンギャルド運動と国家の結託による下意上達的なプロパガンダ、この両者の狭間にその思想を展開しなければならないという原因があった。本研究は今村がどのように両者を批判的に受け止めた上で、その思想を展開したのかを美学者中井正一の「委員会の論理」を手がかりに検証する。この内容については令和5年度に引き続き研究し、表象文化論学会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した資料の主張調査が、国立国会図書館個人向けデジタル化資料送信のサービス開始ににより、該当資料のアクセスが容易になり、研究がスムーズに進むことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に記載したように、今後は戦時下の美学理論を中心に、アニメーションとプロパガンダの関係性を美と集団性の問題から接近して研究を深めるため、資料調査の範囲を美学及び戦時下のアヴァンギャルド運動まで拡大し、当時の文脈への理解を深めた上で、研究を推進していく予定である。
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