本研究の目的は、視覚情報の空間的・時間的統計情報の学習による注意促進過程を認知モデリングと行動実験により明らかにすることである。これまで注意による視覚情報の探索と統計情報の学習による促進についての研究は数多く行われてきたものの、学習過程の詳細な理論やモデルについては研究されてこなかった。本研究は、視覚探索における刺激の空間配置の潜在学習、古典的条件づけなどの連合学習、動物の採集行動研究で用いられる理論などを応用して、視覚情報を探索する際の、これまでの経験と学習の影響を体系的に研究することを目的として実施した。本研究によって視覚探索における学習過程が明らかになれば、これまで扱われてこなかった他の心理学分野や動物行動学分野とも接続が可能になり、新たな枠組みのもとで探索という幅広い行動のメカニズムの解明に貢献できると考える。 今年度は特に、視覚探索の刺激レイアウトを繰り返し呈示することで探索が促進される文脈手がかり効果において、刺激レイアウトを呈示のたびに少しずつ変化させても学習が可能なことを示した。さらに、変化の種類を複数用意すると、学習が促進されたり妨害されたりすることがわかった。これは環境内に視覚情報の規則性が存在することそのものが、学習に影響する可能性を示している。さらに、動物の採集行動研究を応用した視覚採集課題を利用した、探索の学習過程についての検討も進めている。複数の国内学会と研究会でこれらの研究成果を発表した。学術雑誌に論文として出版する準備も進めている。
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