研究課題
本年度は日本で開発中のX線衛星XRISMの射場試験が完了し、2023年9月に打ち上げも無事成功した。打ち上げ後は各機器の立ち上げと調整のための運用に数ヶ月を費やし、その後の定常運用期には天体観測を開始した。自身はCCDカメラXtendの初期運用の計画、コマンドシーケンスの作成、甲南大学のコマンド試験環境での検証を行うことで初期運用をリードした。また、初期のデータを用いた検出器較正も現在進行中であり、自身は特に衛星の観測視野が地球によって隠される時間帯のデータを用いた検出器バックグラウンドの特性の調査をしてきた。結果的には期待されたバックグラウンドレベルと一致することや時間的に非常に安定していることを確認した。同様に精密分光器Resolveの検出器バックグラウンドも調査し、ベースとなるスペクトルモデルを作成した。上記の貢献で、超新星残骸のように広がった天体に対する解析の信頼性を担保することができた。XRISM衛星の地上試験や軌道上初期運用と並行して、現在手に入る観測データを用いた超新星残骸の研究を進めた。超新星残骸RCW103については、約24年間になされた3観測のデータを使用し、衝撃波面の運動を初めて捉えることに成功した。驚くべきことに、1999年から2010年の間には外向きに運動していた衝撃波が、2010年から2016年の間に減速または運動方向を変えて逆行していることが分かった。これは衝撃波面がごく最近、分子雲や星風として吐き出した物質の濃い領域と衝突していることを示し、衝撃波の逆行が見られる天体としては3例目となった。また、超新星残骸N63Aの新しい観測データを用いた解析により星周物質との相互作用の理解を進めているほか、ごく弱い爆発を起こしたと考えられる超新星の残骸の観測からその起源に迫る研究も行っている。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 6件、 招待講演 3件)
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