研究課題
流体駆動システムでは,弁のサイズ&コストは大きな課題である.そこで,以前にダイヤフラムを介してゲートの開口面積をモータで調整するサーボ弁を開発した.しかし,この弁は弁特性に影響するゲートとモータの相対位置の調整に時間を要する問題を有していた.そこで,今年度は相対位置の変わらない封鎖空間内で,傾斜突起のついた回転カムを用いてゲートを押し,モータの回転角度に応じて流量特性を容易に調整できるスライド・ゲート機構式サーボ弁を開発した.また,ダイヤフラム等の接着によりネジ等の部品点数を削減し,低コスト化に向けた改良を行った.さらに,モータ回転角度と弁の出力流量との関係つまり所望の静特性を得る目的で,回転カム設計のための解析モデルを提案した.また,提案モデルを用いて設計した各種回転カムの計算流量特性と実験流量特性を比較した結果,計算結果は実験結果とよく一致し,モデルの有効性を確認した.以上の結果から,試作弁は,回転カムを交換することでモータ回転角度と弁の出力流量との静的関係を容易に変更可能であることも確認できた.
1: 当初の計画以上に進展している
2023年度現在までに,閉鎖空間内に回転型のカムとゲートを封入した互いの相対位置の調整がしやすい開閉機構を提案・試作し,モータ回転角のみに弁開度が依存するスライド・ゲート機構式サーボ弁を開発した.また,従来,多くのネジ等でシールを保つための接合を行っていた弁を,接着シートを介してゴムや樹脂板を押えることで弱い接合できる新たな接合方法を検討し,部品点数の削減と製造時間の低減を行い,低コスト化に向けた弁の改良を行った.さらに,モータ回転角度と弁の出力流量との所望の静特性を有する回転カム設計のための解析モデルを提案し,解析結果と実機を用いた実験結果の比較からモデルの有効性を確認した.また試作弁の性能評価として,周波数応答特性などの動特性評価も行った.この成果については,2023年度現在,査読付き学術論文として投稿中である.
今後の方針については,水道水圧(低圧)でも駆動できる気液両用の伸長型柔軟アクチュエータを複数用いて身体に他動運動や力フィードバックを誘導できる流体駆動ソフトメカニズムの開発について検討する.具体的には,ゴムチューブを蛇腹状の被覆チューブで覆った伸長型柔軟空気圧アクチュエータをリング状に並列に配置した伸縮/湾曲機構を開発し,この機構を,複数の弁を用いることなく湾曲方向を切替えることのできる弁の開発を行う予定である.具体的にはこれまでに開発したスライド・ゲート機構式サーボ弁をもとに,1つの弁で複数のアクチュエータの操作を切替え可能な多ポート切替弁の開発を行う.また,切替弁の基本構造が開発できれば,伸縮/湾曲機構などのソフトメカニズムに搭載可能な切替弁へと改良する予定である.さらに,開発した弁搭載型のソフトメカニズムに対し,Wi-Fi経由での姿勢制御など,情報化社会を見越した搭載制御通信システムの開発を行う予定であり,これらの成果が得られれば,専門の学会の学術論文に投稿する予定である.
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)
JFPS International Journal of Fluid Power System
巻: Vol.15, No.3 ページ: pp. 86-94
10.5739/jfpsij.15.86
Journal of Robotics and Mechatronics
巻: Vol.34, No.2 ページ: pp. 373-381
10.20965/jrm.2022.p0373
International Journal of Automotive and Mechanical Engineering
巻: Vol. 19, No.1 ページ: pp. 9593-9605
10.15282/ijame.19.1.2022.21.0740
巻: Vol.15, No.1 ページ: pp. 7-16
10.5739/jfpsij.15.7