研究課題/領域番号 |
22KJ3067
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
岩井 麻理菜 岡山理科大学, フロンティア理工学研究所, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | オルガノイド / 汗腺 |
研究実績の概要 |
汗腺は汗の通り道である導管部と汗の分泌腺に分けられ、導管部は管腔細胞と基底層細胞から、分泌腺は管腔細胞と筋上皮細胞から構成される。分泌部から同定された汗腺幹細胞を3次元の凝集塊にして培養すると中空構造を有する球形の汗腺様組織体を形作ることが報告されたが、汗腺は細長いファイバー状の管腔構造体であり、単に中空構造を持つ球形の汗腺様組織体とは構造的に大きく異なる。本研究では、汗腺幹細胞凝集塊の形状を制御し得る細胞操作技術として、細胞の自己凝集化技術(Cell self-aggregation technique: CAT)を汗腺幹細胞に応用することで、中空ファイバー構造を有する生体汗腺模倣組織体を創出することを目的とした。 令和4年度は、生体汗腺組織からの汗腺幹細胞の分離とオルガノイドの作製ができたが、汗腺幹細胞の分離効率が極めて低く、CATを用いた汗腺細胞組織体作製の検討まで至らなかった。そこで令和5年度は、生体から分離した汗腺細胞ではなく、汗腺と類似した機能と構造を有する乳腺の上皮細胞をモデル細胞として用いることで、先ずはCATによる細胞凝集塊の作製条件を明らかとした。続いて、この作製条件において汗腺の構成細胞も凝集塊形成させ得ることを確認した。一方、CATと独自に作製した特殊形状培養皿を組み合わせることによって、細胞凝集塊の形状をファイバー状に制御することに成功し、培養により細胞凝集塊を乳腺様構造へと自己組織化し得ることも確かめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、ラットの生体汗腺から汗腺幹細胞を分離し、オルガノイドを形成させることができた。しかしながら、汗腺幹細胞の分離効率は極めて低く、細胞の自己凝集化技術(Cell self-aggregation technique: CAT)を用いた汗腺模倣ファイバー状組織体の作製を検討することはできなかった。そこで令和5年度は、生体から分離した汗腺細胞ではなく、汗腺と類似した機能と構造を有する乳腺の上皮細胞をモデル細胞として用いることで、先ずはCATによる細胞凝集塊の作製条件を明らかとした。続いて、この作製条件において汗腺の構成細胞も凝集塊形成させ得ることを確認した。一方、CATと独自に作製した特殊形状培養皿を組み合わせることによって、細胞凝集塊の形状をファイバー状に制御することに成功し、培養により細胞凝集塊を乳腺様構造へと自己組織化し得ることも確かめた。 以上より、令和5年度はモデル細胞を使用することでCATを用いた凝集塊形成の条件を絞り込み、必要最低限の数の汗腺構成細胞を用いてCATによる凝集塊作製を確認できた。また凝集塊のファイバー形状化にも成功したことから、本研究課題は(2)おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、モデル細胞として用いた乳腺上皮細胞の凝集塊作製条件をもとに、CATによるファイバー形状の汗腺細胞凝集塊を作製する。次いで、ファイバー状に形成制御した細胞凝集塊の自己組織化を誘導し得る培養条件について最適化を行う。各培養条件により得られた組織分析所見は、培養条件の改良にフィードバックする。汗腺様構造を有するファイバー状細胞凝集塊の形成を確認した後、細胞凝集塊を動物の皮下へ移植し組織学的評価を実施する。
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