研究課題/領域番号 |
22KJ3079
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
林 希奈 沖縄科学技術大学院大学, 海洋生態進化発生生物学ユニット, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | クマノミ類 / 宿主イソギンチャク / 攻撃行動 / 種認識 / 色彩パターン / 群集構造 / 多種共存メカニズム / 種間関係 |
研究実績の概要 |
2023年4月~6月にかけて、与論島、沖永良部島、徳之島の計21地点で、クマノミ類と宿主イソギンチャクの群集調査を行った。これらの群集調査で得られた群集データと、昨年度の奄美大島での群集データを合わせて奄美群島の群集構造について解析したところ、ハナビラクマノミとシライトイソギンチャクの個体数が多く、カクレクマノミとハタゴイソギンチャクの個体数が少ないという結果になった。また、沖縄諸島に比べると、岸に近い浅場にも多くの宿主イソギンチャクやクマノミ類が生息していた。先島諸島にも岸に近い浅場に多くのクマノミ類と宿主イソギンチャクが生息していたが、奄美群島と先島諸島では、岸に近い浅場に生息していた宿主イソギンチャクとクマノミ類の種構成が異なっていた。さらに、奄美群島におけるクマノミ類の多種共存のメカニズムは。沖縄諸島や先島諸島と異なっていた。琉球列島でのクマノミ類と宿主イソギンチャクの種構成、生息場所、多種共存のメカニズムの違いは、島嶼間の水温や地形の違いの影響を受けている事が明らかになった。2024年2月~3月にかけて、他種と混泳させたカクレクマノミと同種しか見た事が無いカクレクマノミでは、他種に対する攻撃頻度が変化するのかを確認するため、飼育実験を行い、現在は結果を解析中である。この実験により、縄張りによる侵入者に対する攻撃は経験によるものなのか。生得的なものなのか明らかにする。 2021-2022年度にかけて行った行動実験の論文が国際誌に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度には、与論島、沖永良部島、徳之島でクマノミ類と宿主イソギンチャクの群集調査を行った。これにより、これまで行ってきた先島諸島や沖縄諸島のデータを含めた琉球列島全体のクマノミ類と宿主イソギンチャクの生息環境について解析することが可能となった。また、地域ごとの海洋環境の違いと多種共存メカニズムの変化の関係についても解明することができるようになった。さらに、他種と混泳したことがあるカクレクマノミの攻撃行動は、同種しか見た事が無い個体と比べどのように変化をするのか水槽実験を行い動画を撮影した。このデータを解析することで、クマノミ類の他種、および同種に対する攻撃頻度は経験の有無によって変化するのか明らかにすることができる。以上のように、2023年度は野外調査も水槽実験も精力的に行う事ができ、多くの興味深いデータを襟事が出来たため、研究課題にも大きな進展が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
カクレクマノミとハナビラクマノミは同じ種の宿主イソギンチャクをすみかとするため、しばしば生息地をめぐる競争があることが予想される。これまでの群集調査より、先島諸島ではカクレクマノミの個体数が多いが、ハナビラクマノミがほとんど生息しておらず、一方、奄美大島ではハナビラクマノミの個体数が多いが、カクレクマノミがほとんど生息していないという事が明らかになっている。ハナビラクマノミの個体数が多い地域と少ない地域では、カクレクマノミのすみかにハナビラクマノミが侵入してくる頻度も異なることが予想される。他種との遭遇経験や遭遇頻度の違いが、他種に対する攻撃頻度に影響を与えるか調べるために飼育実験と野外実験を行う予定である。飼育実験は既に2023年度に他種と混泳させたカクレクマノミと同種しか見た事が無いカクレクマノミに、他種を提示させた際の攻撃頻度が異なるか実験を行った。野外実験は2024年4月~6月にかけて、西表島(先島諸島)と奄美大島で行う予定である。野外実験では、西表島と奄美大島に生息するカクレクマノミにハナビラクマノミの模型とカクレクマノミの模型を提示し、模型に対する攻撃頻度が異なるか検証する。その他にも、2024年度にはこれまで行ってきた奄美群島を含む群集調査やRad-seq解析についての論文を国際誌に投稿する予定である。 また、研究成果を魚類学会、行動学会、生態学会などで発表する予定である。
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