研究課題
惑星形成・進化のメカニズムを理解するため、主にハワイに設置された大型望遠鏡、すばる望遠鏡・ケック望遠鏡と地球大気の影響を補正する補償光学装置を利用して、系外惑星を直接検出する直接撮像法を主軸とした観測的研究を進めている。2021年度はコロナウイルスの影響で研究会などの参加数は少なかったが、カリフォルニア工科大学において在外研究を進めることは問題なくできており、データの取得・解析や論文化に関しては順調に進められている。特に惑星の材料となる原始惑星系円盤内に存在する新たな原始惑星の検出に成功し、その中でも申請者がデータ解析を主導するSubaru/VAMPIRESという観測装置において惑星が形成される際に放出される水素輝線Hαを検出し、その科学成果が2022年4月にNature Astronomyにて公開されるだけでなく、数多くのプレスリリースや一般誌において報道された。他にも申請者が主導する観測において、新たに惑星形成が期待される原始惑星系円盤の発見や、若い星から形成されるジェットの観測を進め、それらの成果を国際ジャーナル誌に論文として公開している(但し論文公開は2022年度のため本年度の実績には記載なし)。またこれらだけでなく、これまでに進めていた系外惑星サーベイにおいて新たな伴星候補天体が直接撮像によっていくつか検出されており、これらの天体が実際に伴星である事を確定させるための追観測を進めている。これらの成果は近いうちに論文として発表できる見込みである。
2: おおむね順調に進展している
原始惑星の検出は本研究で進める軸となるサイエンスの一つであり、一年目から新たな天体の検出と特徴づけに携われたことで、順調な進展を見せている。また他にも新たな伴星候補や、昨年度の概要で述べたように新たに惑星形成を示唆する原始惑星系円盤を検出できており、今後の観測プランも順調に進行している。Roman宇宙望遠鏡や次世代望遠鏡を用いた直接撮像による系外惑星の観測的研究に向けた議論においては、現在将来的な望遠鏡で得られるパラメータを厳選しており、そこから可能なサイエンスのコンセプトを固めるという事に重点を置いて議論している。
直接撮像による系外惑星の検出数は他の間接的手法(トランジット、視線速度)と比較して数が少ないものの、パラメータスペース上において異なる性質を持つ惑星に感度が高く、統一的な惑星系に関わるメカニクスの理解には相補的に役割を果たしている。そのため、今後も直接撮像を用いた惑星の検出と、検出された惑星の特徴付けは重要な意義を持つ。保障光学装置や観測装置の発展と共に今後直接撮像によって検出される天体が増えることが期待されるが、申請者が引き続き直接撮像法を用いて新たな天体を検出・特徴づけを進める事で、日本が持つ世界有数の望遠鏡であるすばる望遠鏡のプレゼンスをこれまで以上に高める事が可能となる。また最新の宇宙望遠鏡であるJWST望遠鏡の1年目観測スケジュールが確定したことで、JWST望遠鏡を用いたデータ解析の手法を在外研究先のカリフォルニア工科大学を通じて習得し、国立天文台だけでなく日本のコミュニティに還元できるようになることを図る。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
The Astrophysical Journal
巻: 928 ページ: 49~49
10.3847/1538-4357/ac5111
The Astronomical Journal
巻: 162 ページ: 214~214
10.3847/1538-3881/ac2739
https://subarutelescope.org/en/results/2022/04/04/3039.html