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2023 年度 実施状況報告書

白色矮星に降着する惑星残骸物質から解き明かす中質量星周りの惑星系形成

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ3094
配分区分基金
研究機関国立天文台

研究代表者

奥谷 彩香  国立天文台, 科学研究部, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
キーワード惑星組成 / 白色矮星の重元素 / デブリ円盤 / 赤外スペクトル
研究実績の概要

白色矮星大気では降着天体が元素レベルに分解された形で観測される一方で、その周りの円盤を構成するダストは固体物質(鉱物や金属)組成そのものを探る手がかりとなる。本年度はダスト円盤からの熱放射スペクトルが、固体物質組成の制約にどの程度有用であるかを調べた。具体的には、これまでに得られている白色矮星周りのダスト円盤の赤外スペクトルを、さまざまな組成についてのダストの円盤放射モデルと比較した。特に、白色矮星G29-38の円盤について、近赤外波長域の放射とシリケイトフィーチャーに着目すると、シリケイトダストが金属鉄を含む場合に観測スペクトルが再現され、かつ白色矮星大気で測定された元素組成と整合的であることを明らかにした。他の白色矮星周りの円盤についても同様の解析を実施し、その成果をまとめて国際誌への投稿論文を執筆中である(Okuya et al. in prep.)。
また、上記の発見の肝である、金属鉄のように導電性の高いダストの吸収係数についての解析式も導出した。AGB星周りのダストや原始惑星系円盤などの天体においても、白色矮星周りのダスト円盤と同様に金属鉄や炭素などの物質が近赤外放射の由来だと指摘されている。本研究で作成した解析式は、白色矮星周りのダストに限らず、そのような天体の放射スペクトルの解析にも広く応用できる可能性がある。本成果も論文としてまとめる予定である。
さらに、上述の円盤放射モデルを利用して、白色矮星周りの水氷円盤のスペクトルについても計算した。水氷円盤は氷天体降着の観測的な証拠になりうる。シリケイトダスト円盤よりも水氷円盤は低温であるため、遠赤外波長のフィーチャーが検出に有用であることがわかった。さらに、2030年代に稼働予定の遠赤外宇宙望遠鏡の分光装置の性能を想定し、水氷円盤の質量と地球から系までの距離を関数として、検出可能性の定量的な評価に取り組んでいる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画で予定していたダスト円盤の放射を用いた組成制約について、予想以上の成果を上げることができた。円盤スペクトルおよび星大気の元素組成に基づいて円盤ダスト中の金属鉄の存在を明らかにした発見は世界初である。この発見を複数の国際学会で発表し、観測家から大きな反響を得ている。本成果を論文としてまとめ、国際誌への投稿を急ぐ。また、金属鉄含む導体ダストの吸収係数についての解析式も導出した。これにより、導体的な振る舞いを示す様々な組成のダストについて、効率的なスペクトル解析が可能になると期待する。さらに、白色矮星周りの水氷円盤の検出可能性についての初期成果も得つつあり、これをもとに遠赤外線天文学の将来サイエンス検討会での招待講演を行なった。これをきっかけに、今後も検討会への参加を継続予定であり、将来宇宙望遠鏡による観測との連携を目指す。
一方で、昨年度より行っている白色矮星周りのガス円盤の散逸・観測可能性について今年度は進捗が得られなかった。これはダスト円盤と比較して現状での観測数が少なく、理論研究の方針が立てにくいためである。今後は観測の現状を整理して、ガス円盤に関して取り組むべき問題を再考する。

今後の研究の推進方策

赤外宇宙望遠鏡JWSTによる観測の進展を考慮し、研究計画を遂行する。
白色矮星周りのダスト円盤については、JWSTによるサーベイが進行中であり観測数が大幅に増えることが見込まれるため、予定通り計画を進める。今回得られた成果をもとに、異なる元素種や固体物質の制約可能性についても調べることで、より多様な固体物質の組成推定が可能になることが期待できる。一方、ガス円盤については可能な範囲で計画を進めつつ、ダスト円盤を用いた水氷の検出など代替案も模索していく。
また、本年度、史上初となる木星サイズの惑星候補が白色矮星周りに複数発見された。このような惑星は、重元素の起源である小惑星を散乱させて白色矮星近傍へと供給している可能性がある。白色矮星近傍の重元素観測とその起源となった惑星系を結びつけるにあたって、この観測を重視しつつ当初の研究計画の最終ステップを推進する。

次年度使用額が生じた理由

想定よりわずかに出張代を抑えることができたため、次年度使用が生じた。この差額を翌年度分として請求した助成金と合わせて、物品費(特にPCの周辺機器の拡充)に使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 白色矮星周りの岩石・水蒸気円盤の降着進化:重元素観測から惑星組成の復元を目指して2024

    • 著者名/発表者名
      奥谷彩香
    • 雑誌名

      天文月報

      巻: 1月号 ページ: p.25-p.35

    • オープンアクセス
  • [学会発表] A possible correlation between the metal pollution of white dwarfs and the "dirtiness" of their dust disks2024

    • 著者名/発表者名
      Okuya A., Okuzumi S., Takigawa A., Enomoto H.
    • 学会等名
      Dust Devils Workshop
    • 国際学会
  • [学会発表] PRIMAで探る系外惑星組成:解体惑星と白色矮星円盤の観測2024

    • 著者名/発表者名
      奥谷彩香、野村英子
    • 学会等名
      遠赤外線天文学の将来サイエンス検討会
    • 招待講演
  • [学会発表] 白矮星周りのダスト熱放射スペクトルから探るダスト円盤と星表面の組成間のリンク2023

    • 著者名/発表者名
      奥谷彩香、奥住聡
    • 学会等名
      日本惑星科学会2023年秋季講演会
  • [学会発表] Inferring the solid composition of disrupting minor planets in white dwarf dusty disks from infrared spectra2023

    • 著者名/発表者名
      Okuya A., Okuzumi S.
    • 学会等名
      The 13th meeting on Cosmic Dust
    • 国際学会
  • [学会発表] Accretion of silicate/volatile disks originating from planetary bodies around white dwarfs2023

    • 著者名/発表者名
      Okuya A., Ida S., Hyodo R., Okuzumi S.
    • 学会等名
      JpGU-AGU Joint Meeting 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] Evolution of silicate/volatile accretion disks originating from solid planetary bodies around white dwarfs2023

    • 著者名/発表者名
      Okuya A., Ida S., Hyodo R., Okuzumi S.
    • 学会等名
      Protostars and Planets VII
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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