研究課題/領域番号 |
22J40042
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
深海 菊絵 国立民族学博物館, 超域フィールド科学研究部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | 家族 / ポリアモリー / 米国 / 養育 / ケア / 社会規範 / 多様性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は米国の「ポリファミリー」の実態を、民族誌的手法を通して明らかにすることである。本年度は、ポリファミリーの社会的・歴史的背景に関する文献調査を行うとともに、米国カリフォルニア州ロサンゼルス市近郊においてフィールド調査を実施した。具体的には、米国における家族、フェミニズム運動、カウンター・カルチャーに関する研究の文献を読み進めた。 フィールド調査では、「ポリアモリー」概念が誕生する以前より合意のある非一夫一婦の関係を築き、ポリアモリー・ムーブメントに初期より深く関わってきた人物を対象とした聞き取り調査と、現在ポリファミリーを形成している人々を対象としたライフヒストリーの収集を行った。前者の聞き取り調査では、近代ポリアモリーの小史をまとめた『米国におけるポリアモリーの五〇年』の著者2名に話を伺い、ポリアモリー・ムーブメントの変遷や米国におけるポリアモリーおよびポリファミリーの受容のされ方を考察する上で有意義な語りのデータを得ることができた。 ポリファミリーを形成する人々を対象とした聞き取り調査からは、第一にポリアモリーおよびポリファミリーが経験する心理的・社会的葛藤、第二にかれらが自らの人生/日常において価値を置いていること、第三にポリアモラスな関係を築いている人びとが「家族」をどのようなものとして捉えているのか、に関する語りのデータを収集することができた。これらはファミリー構成員の緊張と社会規範、さらには規範に回収されないケアの三者の結びつきを考察する上で重要なデータであると言える。また、ライフヒストリーからは、過去に築いていた1対1のパートナーシップの経験や血縁親族との関係もかれらの理想の家族像や価値観を形成していることが示唆された。 これらのデータをもとに、米国ポリファミリーの実態を分析すると同時に、本研究の一部を組み入れた単著の執筆を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度も研究計画はおおむね予定通りに進展している。第一に、ポリファミリーが米国に出現した社会的・歴史的背景を考察する調査において、アメリカ研究等の文献調査のみならず、ポリアモリーの近代史を出版した当事者らへの聞き取りが実施された点が挙げられる。これにより「当事者からみたポリアモリー・ムーブメントの出現と変遷」という新たな視点を得ることができた。 また、ポリアモラスな人びとを対象としたライフヒストリーの聞き取り調査では、4名に対して複数回に渡って聞き取りを実施することができたことは現地調査が3月に実施されたため、現地調査の成果は年度内にアウトプットすることができなかった。次年度以降に適切な媒体に論文として投稿することが課題である。 業績面についていえば、『結婚の自由:「最小結婚」から考える』(白澤社)に収められている論文「一夫一婦制を超えて/のなかで生きる」が挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本研究の成果を組み入れた単著の執筆をはじめとして、本年度の研究成果をアウトプットすることに注力する。同時に、当事者への聞き取り調査を継続していく。 2022年度の聞き取り調査では、非白人女性を起点としたスノーボールサンプリング法を採用したことが影響して、ポリアモラスな関係を生きる非白人女性の方々の語りを収集することができた。これらの語りからは、米国ポリファミリーを分析する際にジェンダーのみならずエスニシティや階層に着目することの重要性が再確認された。この点について留意しながら調査を進めていく。 また、次年度以降は、主にポリファミリーと法や制度との関わりに注目した研究を進めていく。具体的には、文献研究に加えて、実際にドメスティックパートナー法において実際に保護を得たポリファミリーへの聞き取りや、支援団体、行政機関にて資料収集を行う予定である。
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備考 |
2022年11月5日、港区市男女平等参画センター リーブラ主催の講座「『惹かれる』と関係性の交差点:ポリアモリー、アロマンティック/アセクシュアルから考える第1回」に登壇し、社会貢献活動を行った。
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