• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実績報告書

野外長期研究とゲノム解析で挑戦する、近親交配回避が個体群動態にもたらす影響の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21J00958
配分区分補助金
研究機関国立研究開発法人国立環境研究所

研究代表者

澤田 明  国立研究開発法人国立環境研究所, 生物多様性領域, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2021-04-28 – 2024-03-31
キーワード近親交配 / 個体群動態 / 絶滅 / 個体群 / 一塩基多型 / ゲノム / 島 / リュウキュウコノハズク
研究実績の概要

南大東島で野外調査を実施した。109つがいの巣から、産卵日、卵数、巣立ちヒナ数などの繁殖成績に関わるデータを取得した。新規に約300個体を標識した。波照間島でも野外調査を実施した。個体群全体を対象とした個体数調査と捕獲調査を実施し、新規に約130個体を標識した。繁殖成績に関わるデータとして巣立ち後のヒナのセンサスも実施した。波照間島の個体群の基礎情報として、個体群サイズと性比を推定した結果はOrnithological Science誌21巻2号に掲載された。個体群サイズは155個体と小さく、性比(全体に占めるオスの割合)は63%と大きくオス側に偏っていることが明らかになった。小さな個体群では近親交配が起きやすくなるため、定量的に個体数の情報を得られたことは、波照間島個体群で近親交配の研究を行なう上での重要な基礎となった。沖縄島での野外調査では想定よりも巣箱利用率が低かったり、捕食被害が多かったりしたことで、得られたデータは少なくなった。
野外調査の終了後、近交弱勢の原因遺伝子を探るための最も基礎となる全ゲノム情報の取得を行った。南大東島のリュウキュウコノハズク24個体のゲノムDNAを抽出し、それを全ゲノム解析の対象とした。抽出したDNAより作成したゲノムライブラリーをIllumina HiSeq X Tenで解析し、全ゲノム解読を行った。得られたデータでゲノムの新規構築(De novo assembly)を実施した。得られたゲノム情報を、遺伝子領域を予測するプログラムAugustusと、任意の塩基配列を既知の塩基配列と比較するプログラムBLASTにかけることで、リュウキュウコノハズクのゲノム上の遺伝子を予測した。これらの解析により、その後の解析でそれぞれの個体が保有する遺伝子変異を特定するためのレファレンスゲノムを得ることが出来た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

野外調査については当初の計画通り進んだものの、ゲノム解析については新型コロナウイルス感染症の影響で遺伝子解析結果の納品遅延が生じて進捗が遅れたため、おおむね順調な進展となった。

今後の研究の推進方策

野外調査については計画通りに進めていく。ゲノム解析については、最終的な研究目的は変わらないものの、解析方法を当初の計画から変更する。当初の計画ではRAD-seqを用いてゲノム上の一部の遺伝子変異を抽出するという解析を、無作為に選んだ多数の個体に適用することで、近交弱勢に関わる遺伝子変異を探索する予定であった。しかし、この解析を行なうのに必要な量のDNAを多数の個体について確保することが難しいことが判明した。そこで、全ゲノム解読を、子の生存率の善し悪しに関わる基準で選んだ少数の個体について実施して、そのゲノムの比較により近交弱勢に関わる遺伝子変異を探索するという予定に変更する。すなわち、前向き研究から後向き研究の変更である。近交弱勢に関わる遺伝子変異は、その有害な効果が小さいことが予想されるため、特定の個体に絞って解析する後ろ向き研究のアプローチは、当初計画よりも効率よく近交弱勢に関わる遺伝子変異の特定を行なえることも期待される。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Estimation of Population Size and Sex Ratio of Ryukyu Scops Owl Otus elegans on Hateruma Island2022

    • 著者名/発表者名
      Sawada Akira
    • 雑誌名

      Ornithological Science

      巻: 21 ページ: 245-251

    • DOI

      10.2326/osj.21.245

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 南大東島でリュウキュウコノハズクの巣から得られたクロズマルコガシラハネカクシ2022

    • 著者名/発表者名
      橋爪拓斗, 澤田 明, 白岩 颯, 金杉尚紀
    • 雑誌名

      Pulex

      巻: 100 ページ: 885-886

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Effect of Experience on Parental Role Division in Ryukyu Scops Owl Otus elegans2022

    • 著者名/発表者名
      Murakami Ryota、Sawada Akira、Ono Haruka、Takagi Masaoki
    • 雑誌名

      Ornithological Science

      巻: 21 ページ: 35-44

    • DOI

      10.2326/osj.21.35

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Growth Curves of Ryukyu Scops Owl Nestlings, an Owl Species with Asynchronous Hatching and Reversed Sexual Dimorphism2021

    • 著者名/発表者名
      Sawada Akira、Akatani Kana、Takagi Masaoki
    • 雑誌名

      Ardea

      巻: 109 ページ: 1-13

    • DOI

      10.5253/arde.v109i3.a1

    • 査読あり
  • [学会発表] リュウキュウコノハズクのヒナの生死に気象条件は影響するのか2022

    • 著者名/発表者名
      金杉尚紀, 澤田明, 熊谷隼, 中村晴歌, 白岩颯, 高木昌興
    • 学会等名
      日本生態学会
  • [学会発表] メスの生存が南大東島のリュウキュウコノハ ズク個体群の運命を左右する2021

    • 著者名/発表者名
      澤田明, 岩崎哲也, 井上千歳, 中岡香奈, 中西啄実, 澤田純平, 麻生成 美, 永井秀弥, 小野遥, 高木昌興
    • 学会等名
      日本鳥学会
  • [学会発表] リュウキュウコノハズクの南大東島個体群における採餌戦略 -高い個体群密度は行動圏にどう影響するか-2021

    • 著者名/発表者名
      熊谷隼, 澤田明, 江指万里, 髙木昌興
    • 学会等名
      日本鳥学会
  • [学会発表] 気象要因が亜種ダイトウコノハズク(Otus elegans interpositus)の繁殖に与える影響2021

    • 著者名/発表者名
      金杉尚紀, 澤田明, 熊谷隼, 中村晴歌, 白岩颯, 高木昌興
    • 学会等名
      日本鳥学会
  • [学会発表] 鳥類共生性ウモウダニの負荷量に関係する宿主形質の探索2021

    • 著者名/発表者名
      白岩颯, 澤田明, 中村晴歌, 金杉尚紀, 熊谷隼, 高木昌興
    • 学会等名
      日本鳥学会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi