研究課題
本研究課題の当初の目的は、リュウキュウコノハズクを研究材料に、1)近親交配回避が複数の形質を介して個体群動態にもたらす影響を解明すること、2)その影響の個体群間での違いと、その影響の原因遺伝子をゲノム情報から解明することであった。そのために3つの島の個体群(南大東島、波照間島、沖縄島)について繁殖モニタリングや標識再捕獲などの野外調査、およびゲノム上の一塩基多型(SNP)の抽出などのゲノム解析を実施した。野外調査に関しては計画通り進み、2021年度から2023年度まで一貫して、各個体群で多数の個体から基礎生態データとゲノム解析用の血液サンプルを取得した。一方、ゲノム解析については当初計画のRAD-seqのかわりに、原因遺伝子に関してより多くの情報を得られると期待される全ゲノム解読にもとづくSNPの解析を進めた。もっとも多くのデータが揃った南大東島の個体群について、生まれた子の生存率の高いつがいと低いつがいを選抜した。それらのつがいの雄雌の血縁度と子の生存率の関係を調べたところ、有意な負の相関関係は見いだされなかった。すなわち、そもそも近親交配の悪影響が明瞭に検出されるほどには存在していないことが示唆された。それゆえに当初の研究目的にある、近親交配の悪影響を回避することが個体群に与える影響についてまでは検討が進まなかった。しかしその一方で、南大東島、波照間島、沖縄島の間でゲノムのホモ接合度に違いがあることが分り、個体群によって近親交配が行われる程度に違いあることが推察された。さらにこれらの個体群について全ゲノムデータをもとに過去の集団動態を推定することができた。南大東島は数万年のスケールで小さな個体群が維持されている可能性があり、近親交配の悪影響をもたらす遺伝子変異の集団からの排除が進んでいるため、近親交配の悪影響が明瞭には存在しないと考えられた。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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