研究実績の概要 |
1年以上にわたって採水した琵琶湖表層のサンプルから、ウイルス感染によって死滅している細菌の推定を試みた。細菌生産量は15N-dAの取り込み法、細菌群集は16S rRNA遺伝子を対象としたアンプリコンシーケンス法、ウイルス群集はショットガンシーケンス法で分析した。その結果、約1,600種の細菌を検出することができた。細菌が最も活発になる時期(水温の高い7月、8月、9月)に19種の細菌が全細菌量の約40%を占め、細菌生産の大部分に寄与している可能性があることが明らかになった。また得られたウイルス種(約13,000種)の宿主を綱(門)レベルで推定した。これらの細菌19種と同じ綱(門)が宿主であると推定されたウイルスに対して共起解析を実施したところ、細菌生産に寄与していると考えられる細菌19種全てに対して、共起するウイルスを少なくとも1種検出できた。このことは、夏季に活性の高い細菌種がウイルス感染によって抑制されていることを示すものであり、”kill the winner” modelを支持するものである。また、深層で優占している細菌とウイルス種の約50%が、調査期間を通して存在していたこともわかった。このことは、深層では”kill the winner” modelとは別の力学が働いている可能性を示唆している。さらに、表層における細菌生産量や環境パラメータ(水温や有機物濃度など)の急激な変化は、細菌群集やウイルス群集のより早い変化に繋がるが、これらの群集変化速度は、毎年、鉛直混合によってリセットされることが明らかとなった。つまり、12ヶ月後には表層と深層で原核生物群集とウイルス群集の変化速度が同程度になる可能性がある。
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