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2022 年度 実績報告書

夏季の北極低気圧の理解と短期~季節内スケールの北極大気予測精度向上に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 22J01703
配分区分補助金
研究機関埼玉県環境科学国際センター
特別研究員 山上 晃央  埼玉県環境科学国際センター, 温暖化対策担当, 技師 (30850135)
研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2025-03-31
キーワード北極低気圧 / エアロゾル / 大気海洋結合過程
研究実績の概要

北極低気圧が北極域でのエアロゾルの変動に対してどのように影響を与えているのかを調べた。複数エアロゾル再解析を用いた解析によって、北極域は主にユーラシア北部の森林火災を起源とする有機炭素エアロゾルの寄与が最大であり、最大変動モードは北部ユーラシア上に最大振幅を持ち、北極への輸送や沈着には北極低気圧に伴う水蒸気輸送や降水が寄与していることが示された。また、寄与が最も大きい変動モードは下層渦が支配的な北極低気圧、2番目に寄与が大きなモードは上層渦が支配的な北極低気圧にそれぞれ対応していた。また、下層渦が支配的な北極低気圧は北緯70度以北への有機炭素エアロゾルの輸送と沈着、および海洋域では海塩エアロゾルの発生、沈着にもに大きく寄与していることが示唆された。
また、並行して複数解像度を用いた大気海洋結合予測を用いて北極大気の予測精度に対する大気海洋結合過程の影響を調べた。高解像度大気モデル(~10 km)を高解像度海洋モデル(~10 km)と結合させた実験では、北大西洋海流域での大気海洋結合過程によって北極へ進入する低気圧の進路予測が変化し、低解像度海洋モデル(~100 km)と結合させた実験と比較して北極全体の予測スキルが改善された。このような大気海洋結合過程の影響は低解像度大気モデル(~55 km)では見られなかった。また、低気圧の予測の変化は、北極海の海面および海洋混合層の水温、海氷分布にまで影響を与えることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

北極域のエアロゾル変動研究については、データの取得から解析まで進め、国内・国際学会等での研究発表を行なった。成果をまとめ論文として投稿したが、ライフイベントや異動に伴う研究環境の変化が重なったことで改訂作業や追加解析に時間がかかり、採択まで時間を要したため想定より進捗が遅くなった。最終的には論文として成果をまとめ、投稿・採択まで完了することができた。また、これに伴い、複数解像度を用いた大気海洋結合予測を用い解析についても着手が遅れたため想定よりも進捗がやや遅くなった。

今後の研究の推進方策

今後は大気海洋結合実験を用いた大気海洋結合過程が北極大気の予測精度に与える影響に関する解析に集中し、結果をまとめて論文投稿のための準備を行う。特に、高解像度大気モデルと海洋モデルを結合させた際に見られた大気海洋結合過程が、低解像度海洋モデルと結合した際には見られなかった事例について、より詳細な解析を行う。大気海洋結合過程として主に二つのメカニズムが考えられており、それらがどのように働いているかについて、風速差の構造などを確認しながら調べる。また、低気圧の発達については渦位に基づく解析を行う予定である。大気境界層での運動量や顕熱フラックスが渦位の生成・消滅にどのように影響するかについての評価手法を適用した解析を行う予定である。また、最終的には解析の結果を論文としてまとめて投稿する予定である。
また、この結合実験は数日から2週間程度の中期予報を対象とした解析であり、さらに長い時間スケールである延長予報(2週間から2ヶ月)データを用いた解析についての解析も進める予定である。そのために、延長予報のデータ取得を継続している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Statistical Evaluation of the Temperature Forecast Error in the Lower‐Level Troposphere on Short‐Range Timescales Induced by Aerosol Variability2022

    • 著者名/発表者名
      Yamagami A.、Kajino M.、Maki T.
    • 雑誌名

      Journal of Geophysical Research: Atmospheres

      巻: 127 ページ: 1-19

    • DOI

      10.1029/2022JD036595

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Synoptic-timescale variability of Arctic aerosol in three reanalyses and its relationship to the atmospheric circulation in summer2022

    • 著者名/発表者名
      Yamagami, A., M. Kajino, T. Maki, and T. Toyoda
    • 学会等名
      The 13th Symposium on Polar Science
    • 国際学会
  • [学会発表] Contribution of Potential Vorticity Merging for the Persistence of Arctic Cyclones in Summer2022

    • 著者名/発表者名
      Yamagami, A., and Y. Takaya
    • 学会等名
      YOPP final summit
    • 国際学会
  • [学会発表] 現業数値予報における北極大気の予測可能性について2022

    • 著者名/発表者名
      山上晃央
    • 学会等名
      日本海洋学会 2022年度秋季大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 北極でのエアロゾルの変動と循環場の関係2022

    • 著者名/発表者名
      山上晃央, 梶野瑞王, 眞木貴史
    • 学会等名
      日本気象学会 2022年度春季大会

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公開日: 2024-12-25  

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