本研究では、リグニン由来芳香族化合物を取り込む外膜トランスポーターの構造解析を行い、その取り込みメカニズムを解明する。その後、構造に基づいた変異導入によって、基質に認識や取り込み能を改変したトランスポーターの作出を目的とした。申請者らが同定したトランスポーター(ddvTとphcT)を大腸菌で発現させ、精製タンパク質を取得した。精製タンパク質を用いて結晶化スクリーニングを行ったが、結晶化条件を得ることができなかった。そこで、結晶化が不要な構造解析手法であるクライオ電顕を用いた単粒子解析によってこれらの構造を明らかにすることにした。界面活性剤に可溶化条件を複数検討し、PhcTとDdvTの構造解析を行ったが、構造機序の理解に十分な分解能の構造が得られなかった。そこで、ナノディスクに再構成したPhcTとDdvTを用いて、300 kVのクライオ電顕であるTitan KriosG4によるデータセットの取得を行った。その結果、PhcTについては、基質との複合体構造が3.4オングストロームで得られた。現在、構造精密化を行っている段階である。DdvTについては、6オングストロームの構造が得られ、概形が確認できたが、基質や基質結合部位の詳細までは判断できない分解能であった。また、精製タンパク質を用いて、PhcT、DdvTと相互作用するTonBの同定を行った。等温滴定型熱量測定により、PhcT、DdvTとTonB1、TonB2との結合親和性を評価したところ、PhcT、DdvTはTonB1と相互作用することが判明した。したがって、これらのTonB依存的な取り込みにはTonB1が関与することが示された。
|