研究課題/領域番号 |
21J00781
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
永野 茜 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 心的表象操作 / 物理的因果理解 / 道具使用 / 新世界ザル / 旧世界ザル / 比較認知科学 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
今年度は,心的表象操作能力の進化過程と発達過程を解明することを目的に研究を行った。心的表象操作能力とは,目の前にある物体を実際に操作しなくても,その物体が環境に及ぼす結果を推測する能力のことである。この心的表象操作能力の発生過程を解明するために,非ヒト動物を対象に,前肢や手などで離れた位置にある餌を道具を用いて獲得させる道具使用課題が広く実施されている。本研究課題では,特に,餌と道具が同時に提示されない状況下での,道具選択行動に焦点を当てた。 まず,フサオマキザル9個体を対象に,道具使用課題における,餌や道具と被験体の間の最適な距離を検証するために,テーブル上の様々な位置に餌を置き,その餌を取らせる訓練を実施した。また,マカクザル(ニホンザルおよびアカゲザル)を対象とした道具使用課題の考案を行った。実験で使用予定のニホンザルの馴致を行った。今年度の3月に設置したマカクザル用集合ケージでの実験の実装方法について考案し,ケージの設計の修正提案と,集合ケージに隣接させて設置する道具使用架台の考案を行った。なお,当該集合ケージは,被験体が餌と道具を同時に見ることができないような場面を実現できる構造であり,十分な広さもある。 本研究の基となる齧歯類ラットの道具使用行動についての研究と,動物の道具使用行動全般について執筆した章の内容が受理された。この章が含まれる書籍は,2022年7月にRoutledge社から出版予定である。また,ラットの道具使用行動についての論文を1本執筆し,海外誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基礎となる,ラットの道具使用行動に関する論文を1本,執筆・投稿し,海外の出版社から出版予定のHandbookのうち,動物の道具使用全般に関して執筆した章の内容が受理されたため。また,フサオマキザルを対象とした実験準備と,マカクザル(ニホンザル,アカゲザル)を対象とした訓練の実施と実験計画の考案,実験準備を行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,新世界ザルよりも進化的にヒトに近い旧世界ザルの一種であるマカクザルを対象に,心的表象操作の進化過程を検討する。道具使用課題を実施し,道具使用課題遂行時の脳神経活動を測定したり,特定脳領域の一時的かつ非侵襲的な不活性化が道具使用課題成績に与える効果を検証することで,進化的に新世界ザル以降で見られる高度な心的表象操作能力を可能にしている神経メカニズムの解明を目指す。3月には,マカクザル用の集合ケージが完成したため,そのケージ内での行動課題の考案した上で課題を実施する。
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