研究実績の概要 |
心的表象操作能力とは,目の前のある物体を心的に操作することで,まだ実際に生じていない,その物体の動きや状態などを推測する能力のことである。本研究では,特に,目の前にない物体の心的表象に関する推論能力の進化について解明することを目的としている。更には,fMRIを用いてニホンザルが課題を遂行している最中の脳活動を測定することで,その能力の神経機構を解明することを目指している。 本年度は,ニホンザル2個体を対象に,推論課題に必要な基礎的能力を獲得させるための訓練を実施した。2個体のうち1個体は,ドットの色を弁別した上でその色を記憶するという遅延見本合わせ課題を行うことができるようになった。もう一方の個体については,報酬として用いているジュースや,課題での刺激選択のために用いているセンサーボックスなどの実験装置への馴致を行うことができた。 加えて,本研究の基礎となる研究結果をまとめ,書籍の章や論文,学会発表という形で報告した。まず,ラットの心的表象操作に関連した内容について,書籍『The Routledge International Handbook of Comparative Psychology』内の章,「Current Psychology」と「Frontiers in Psychology」への掲載論文(合計2本)として発表した。更に,コモンリスザルの心的表象操作については,日本動物心理学会第82回大会にてポスター発表を行った。
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